多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

精神障害 忘れないで「年金」

2014-01-23 15:31:58 | ダイバーシティ
(以下、東京新聞から転載)
====================================
精神障害 忘れないで「年金」 (上)進まない手続き

2014年1月23日


 障害を負ったときのセーフティーネット「障害年金」。厚生労働省が昨年に発表した調査では、障害年金受給の可能性があるのに受給していない人は身体障害で0・4%。比較的理解の進む身体障害に比べ、精神障害は、非受給率が高いとされる。背景と最近の手続き事情を二回に分けて伝える。 (佐橋大)
 愛知県精神障害者家族会連合会(愛家連)や名古屋市精神障害者家族会連合会(名家連)の相談電話では、電話してきた人に、精神障害者保健福祉手帳と障害年金について聞くようにしている。本来、もらえる障害年金を受けずに、生活に困窮する人を何人も見てきたからだ。
 「『年金って何ですか』という反応が六~七割」と、相談電話を受ける名家連の堀場洋二会長は話す。障害年金自体が知られていないという。
 それ以外にも、年金受給を阻む要因はたくさんある。「症状が出てしばらくは、家族も精神疾患の症状に巻き込まれて大変。年金の手続きとか考える余裕もない人が多い」と愛家連の木全義治会長は話す。
 若い年代で突然、障害者になることも、受給を阻む壁だ。精神障害の原因の病気の代表例、統合失調症は、二十歳前後で発症しやすい。発症直後は激しい症状が出やすく、特に社会生活が難しくなる時期。受診もままならず、保険料の納付も後回しになりがち。未納の多さで支給要件=別項=を満たせなくなる人もいる。病気は親にも本人にも不測の事態。親元を離れた学生で未納が起きやすい。
 障害年金専門の社会保険労務士、中島由恵さん=愛知県豊橋市=によると「障害年金を申請すると、障害が周りに分かるから」と、手続きをためらう本人や家族もいる。誤解と病気への偏見が手続きの壁になっている。症状を本人が認めにくい病気の特性や「そのうち良くなる」という期待も、手続きを遅らせる。
 保険料の納付など、医療機関で把握しにくい情報が絡む年金は、精神障害福祉手帳に比べ、医療機関のソーシャルワーカーが注意喚起しにくく、当事者が気付きにくいという。
 申請の書類作りで挫折し、諦めるケースも精神障害では多いという。障害が原因で家族との関係が悪くなるなどして、本人一人で申請書を整える人が多い。病気の経過や、通院の状況などをまとめるが、「何を書くべきか分からないという人は多い」と中島さん。
 申立書に日常生活の状況ではなく周囲への恨みを書き連ねるなど、年金事務所の求める情報が欠けた書類を提出して却下されることも。そうしたケースでも、専門家の助言を受けたり、専門家に依頼したりして書類を整えて再申請すれば、受給に結び付く例もあると中島さんは指摘。「申請の却下で自信をなくし、再申請をためらう人も多いが、申請をめぐる環境も変わってきている。一度申請して棄却されても、あきらめないで」とも話す。(次回は30日)
 <障害年金支給の要件> 障害につながる病気で、初めて医者にかかった日が20歳より前か、20歳以降なら、初診日に年金制度に加入しており、初診日の属する月の前々月までの期間で(1)直近1年間の保険料の未納がない(2)保険料の納付期間と免除期間の合計が、被保険者期間の3分の2以上-のいずれかを、初診日前日の時点で満たすことが条件。その上で初診から1年6カ月の「障害認定日」以後、一定以上の障害が認められれば、請求に基づき年金が払われる。障害基礎年金1級は年額97万3100円、2級は77万8500円。初診日に厚生年金に入っていれば、障害厚生年金も受けられる。
 ◆精神障害者の障害年金などの相談先 愛家連の相談電話(月・木、前10~後3)=電052(265)9213、全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)相談室(月・水・金、前10~正午、後1~3)=電03(6907)9212

国連の障害者権利条約、日本が批准 発効5年でやっと

2014-01-23 15:31:31 | ダイバーシティ
(以下、朝日新聞から転載)
====================================
国連の障害者権利条約、日本が批准 発効5年でやっと
2014年1月21日17時09分

米ニューヨークの国連本部で20日、日本政府の批准書をビジャルパンド国連条約課長(右)に手渡す吉川元偉・国連大使=春日芳晃撮影

 日本政府は20日、障害者の差別禁止や社会参加を促す国連の障害者権利条約を批准した。条約発効から5年余りでようやく日本の批准が実現した。2月19日から日本でも効力が生じる。

 吉川元偉・国連大使が20日、国連本部を訪れ、批准書を国連のビジャルパンド条約課長に手渡した。

 国連によると、日本の批准は世界141番目(欧州連合を含む)。中国や韓国などはすでに批准しており、吉川大使は「たいへん長い時間がかかってしまい、国際的に誇れることではないが、模範的な締約国となれるべく努力していきたい」と語った。

 同条約は2006年12月に国連総会で採択され、08年5月に発効。「障害に基づくあらゆる差別」の禁止や、障害者の権利・尊厳を守ることをうたう。締結国は障害者が公共施設を使いやすくするなど、さまざまな分野で対応を求められる。

 日本では昨年6月に障害者差別解消法を成立させるなど国内法を整備し、同12月、条約の承認案が国会で正式承認され、批准が実現することになった。(ニューヨーク=春日芳晃)

年のはじめに考える 障害を共に乗り越える

2014-01-23 15:31:02 | ダイバーシティ
(以下、東京新聞から転載)
====================================
年のはじめに考える 障害を共に乗り越える

2014年1月3日


 東京パラリンピック・オリンピックは六年後。ことしは国連障害者権利条約が批准されます。健常者の「想像力」こそが障害者の突破力を高めるのです。
 昨年九月、日本中が歓喜に沸きました。ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会総会で、二〇二〇年夏季オリンピック・パラリンピックの開催都市が東京に決まった瞬間です。
 東京招致の最終プレゼンテーションで、佐藤真海さん(31)のスピーチは内外の人々の胸を強く打ちました。そう、骨肉腫で右足を失った陸上競技の選手です。
◆持てる力の結晶
 「新たな夢と笑顔を育む力。希望をもたらす力。人々を結びつける力」-。病や災害に襲われ、絶望のふちに沈んだ人々にとって、大きな救いとなる「スポーツの真の力」を説いたのでした。
 このトップアスリートを支えてきた縁の下の力持ち。そのひとつは間違いなく義足でしょう。
 佐藤さんの義足を作り、十年以上にわたり相談に乗っている義肢装具士の臼井二美男さん(58)に会いました。
 この道三十年の大ベテラン。鉄道弘済会義肢装具サポートセンター(東京・南千住)で、四百人を受け持っている。九割はスポーツ競技とは無縁の人々だそうです。
 手や足を失い、しおれ果てたような患者がやってくる。切実な望みに耳を傾けることから仕事は始まります。一緒になって人生を取り戻す。そんな気概に満ちあふれています。
 農作業は土や雨にまみれる。革靴での営業回りにこだわるサラリーマン。ミニスカートにあこがれる年ごろの女性。もちろん、スポーツに本格的に挑戦する人も。
 根っからの職人かたぎ。臼井さんはこう言います。
 「義肢は体に合うというだけじゃだめです。未来までサポートできるように想像力を働かせる。血が通うような義手、義足です」
◆障害から才能へ
 スムーズに跳んだり、走ったりできれば、再び自信がつく。新しい目標が生まれる。患者がそれを達成できたときの喜びは、そのまま臼井さんの喜びなのです。
 佐藤さんのスピーチには、こんな一節がありました。
 「そして何より、私にとって大切なのは、私が持っているものであって、私が失ったものではないということを学びました」
 臼井さんは携帯電話に全患者を登録し、小まめにやりとりを続けています。絶えず一人一人の身になって考えている。どうやって障害を克服するかではなく、どうすれば互いの持てる力を最高の形に結実させられるかをです。
 東京・西新宿に目を転じます。
 従業員十人足らずの小さな印刷会社まるみ名刺プリントセンターを訪ねました。発達障害や精神疾患のある従業員が三人います。
 社長の三鴨みちこさん(45)が思いついた朝礼はユニークです。社長以下全員が必ずその日の気分と体調を報告するのだそうです。
 「病気や障害のない人も、体調が優れないときはあります。みんなが事前に伝え合っておけば、互いに気を配り合えるし、仕事の能率だって上がるでしょう」
 柔軟な発想はこれだけにとどまりません。障害を能力へと変えてしまう。例えば、文字の扱いが苦手な発達障害の女性(27)はデザインや色調、印刷の担当です。
 雑音に極めて敏感なので、ちょっとした異音で機械の不具合を察知する。きちょうめんさは、目を凝らさなければ気づかない印刷ミスや汚れを即座に発見する。
 以前まで高齢者施設に勤めていました。二つ以上の事柄を一度に指示されると混乱するのに、理解のない上司に怒られっぱなし。とうとううつ病を患い、辞めざるを得なかったと打ち明けてくれました。
 障害者権利条約の考え方をかみ砕いて言えば、「障害は個人ではなく、社会にある」です。障害者の言い分に耳を貸さずに築き上げられた今の社会の仕組みです。
 「まさか自分や家族は障害を負うまい」。健常者のそんな想像力の欠如こそが障害への無理解、無関心を招いている面がある。
 段差をなくす。点字で表示する。筆談に応じたり、ゆっくり話したり。健常者が障害を知って機転を利かせれば、障害者は優れた才能を開花させるはずです。
◆成熟社会の手本を
 歴史が異なるとはいえ、なぜいつまでもオリンピックとパラリンピックは別々に行われるのか。
 「男子の部」と「女子の部」と同様に「障害者の部」を設け、統合できれば二十一世紀にふさわしい。「平和の祭典」の意味合いもきっと深まるに違いありません。
 世界中から大観衆が来日したとき、障害を越えて支え合う成熟社会の見本を披露したいものです。