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女性の就労促進、社会制度と共に--東大教授・大沢真理さん

2013-07-04 13:30:45 | ダイバーシティ
(以下、毎日新聞から転載)
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くらしと政治:’13参院選/下 女性の就労促進、社会制度と共に--東大教授・大沢真理さん
毎日新聞 2013年07月03日 東京朝刊


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 安倍政権は「女性の活躍を成長戦略の柱にする」とうたうが、この政権は「女性の活躍」に比べ「男女共同参画」という言葉をほとんど使わないのが特徴的だ。

 男女共同参画とは、男性を含めて人生の選択肢をより豊かにすることを目指すものだ。女性の活躍だけを強調すると、経営者は単に「女性の問題」としか受け取らないのではないか。悪くすると、一握りのエリート女性は「働かせ放題」で無限定な頑張りを求められる一方、大多数の女性は待遇も改善されず、人生の中心は「子どもを産んで育てる」ことになりかねない。

 懸念されるのは、多くの女性が「ジョブ型正社員」(限定正社員)になりかねないことだ。ジョブ型正社員は、派遣やパートより高給かもしれないが、勤務地や職務が限定されることで、処遇は低くなる。従事するプロジェクトが終われば解雇されるなど、雇用の保障もない。「解雇し放題」では、女性全体の処遇を改善することにはならない。

 安倍政権は「育休3年」も掲げているが、休業期間の所得や現職復帰の道について「底上げ」があるのかといえば、心もとない。底上げがないままの「活躍促進」は、単なる「女性の利用」に終わる恐れがある。

 日本は、主要国では米国に次いで貧困率が高い。その特徴は、家族で2人以上が働いていても、ほとんど貧困を解消できない点にある。他の国では、現役世帯で貧困に陥るのは、一家で誰も働いていない場合。2人が働けば、だいたい貧困を抜け出せる。なのに日本では、現役の貧困世帯の4割に2人以上の働き手がいる。これは、女性の稼ぎがいかに低いかということも物語っている。

 自民党の憲法草案には「家族の扶養義務」を強要するような内容があるが、現状でそれを義務づけたら、共倒れになる家庭が続出するだろう。

 他の国では、税や社会保障制度が貧困を緩和しているが、日本は共働きや子育て世帯に対して社会保障制度が、かえって貧困を深めている。健康保険や年金などの保険料が高く、低所得者の負担がより重いためだ。これでは経済成長の底力にならない。

 確かに女性の就労促進も必要だ。だが、税や社会保障制度を本当の意味で改革しないと、日本は再生しない。

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 ■人物略歴

 ◇おおさわ・まり

 東京大社会科学研究所教授。専門は社会政策。男女共同参画社会基本法策定にかかわる。著書に「復興を取り戻す」(共著)など。

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