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異文化への熱い好奇心 神戸で「美術のなかの交易」展

2010-07-05 09:21:02 | 多文化共生
(以下、神戸新聞から転載)
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異文化への熱い好奇心 神戸で「美術のなかの交易」展 
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狩野内膳筆の屏風(複製)の前に展示された紙人形と、笑顔を見せる野口敬子さん=神戸市中央区京町、市立博物館(撮影・吉田敦史)

 桃山・江戸時代の貿易を、絵図や工芸を通して紹介する企画展「美術のなかの交易‐南蛮屏風から長崎唐館交易図巻まで‐」が神戸市立博物館(同市中央区)で開かれている。同館所蔵の南蛮美術品など約40点を出展。そこには海を渡ってきた品物や風俗が事細やかに描かれ、異文化と出合った日本人の関心を映し出す。(神谷千晶)

 「南蛮屏風(びょうぶ)」とは16世紀半ばから17世紀初頭、スペインやポルトガルとの交易を描いたもの。

 中でも豊臣秀吉のお抱え絵師、狩野内膳(かのうないぜん)による作は華麗な色彩と緻密(ちみつ)な描写で知られ、重要文化財に指定されている。南蛮船が異国を出帆する様子を描いた左隻、日本の港に到着した船と司令官らの行列を表した右隻の六曲一双。人物や馬のポーズには、日本美術の慣例的な描法がみられる。だが人を乗せた象などは非常に写実的に描かれ、腹部から脚にかけての陰影表現には、西洋美術の影響も感じられる。

 南蛮屏風には、宣教師やロザリオ、南蛮寺などが多く登場。しかし江戸時代前期の「南蛮人交易図屏風」になると、キリスト教関係のモチーフは姿を消し、禁教令発布後の社会情勢がうかがえる。また戸口から好奇のまなざしを向けていた日本人は、南蛮人や中国人と一緒に商売をしたり、踊ったりする姿に代わる。外国人の存在が日常化してきた雰囲気を伝える。

 異国を題材とした作品はさまざまな目的で制作された。商家は商売繁盛を願って南蛮屏風を描かせ、長崎の画家・城義隣(じょうぎりん)は土産物とするため異国の風俗を大量に描写。一方、唐人屋敷の様子を記録した渡辺秀詮筆「長崎唐館交易図巻」は、長崎奉行への報告のため、精密に描かれている。

 それにしても、異国文化への熱い視線には息をのむ。「長崎唐蘭館図巻」には鶏やカモをつかんで歩く人や調理の様子までが描かれ、当時の食生活が垣間見える。東西の技術が融合した作品も生まれ、銅版画を蒔絵(まきえ)で再現した「蒔絵カディス海戦図プラーク」、輸出向けに貝殻で表面をびっしり覆った「貝貼り小櫃」などは、当時ならではの逸品だ。

 近世日本と異国の接点を見つめた絵師たちは、その驚きを筆に託した。それは海外交易の歴史から当時の雰囲気までを生き生きと物語る、時代の証人となっている。

 8月1日まで。月曜休館(7月19日は開館、翌20日は休館)。同館TEL078・391・0035

 もう一つの見どころは、南蛮屏風の登場人物をかたどった約60点の人形だ。芦屋市の紙人形作家、野口敬子さん(76)ら女性8人のグループが制作した「駒子の紙人形」。体長15~17センチ。細部まで作り込まれ、今にも動き出しそうだ。

 野口さんの師匠の故・石垣駒子さんが創始者で、針金の軸に綿を巻き、和紙を重ねて作る。

 野口さんは2005年に同館で南蛮屏風を鑑賞し、「衣装も多彩だし、表情もポーズも生き生きとしている」と驚き、主宰する教室のメンバーと一緒に人形を制作した。同館の出展依頼を受け、会期中、展示している。

(2010/07/04 14:47)

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