森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

モノトーン

2022-01-30 | 日記


 この一週間は大雪はなかったものの、毎日小雪がはらはら舞って、
 お日さまの顔をみることはできませんでした。
 大寒もじきに終わるのですが、この森では今から2月の半ばまでが
 一年でいちばん寒い時季です。
 もうひと山越えれば春近し、といったところでしょうか。
 
 冬の森はまったくモノトーンの世界で、唯一空だけが色彩を持って
 います。
 しかしこんな曇り空の時は、その空も色を失ってしまいます。
 当然、空の色を反映している湖水の色もなくなります。
 
 そんな時は、はるばる遠くから飛んできたオオハクチョウのクチバシ
 の僅かな黄色に目がいきます。
 そして、なんとも懐かしい気持ちになります。



 今年も大沼では20羽~30羽のオオハクチョウが越冬しています。
 本州の湖に比べたらごく僅かな羽数ですが、これでも稀少でありがたい
 ことです。
 もともと北海道の湖は、冬場には完全に凍結してしまうために、白鳥
 たちは餌となる水草を採ることができません。
 ですから本州の湖へ渡るための、休息地としての役割だけなのです。
 本州の各湖には、数百羽あるいは千羽以上の白鳥が降り立ち、それは
 それは壮観です。
 去年はなんと、奄美大島でもコハクチョウが確認されています。
 
 
 中継点としての北海道の湖ですが、ありがたいことに大沼には一か所
 だけ、水流があるために凍らない場所があります。
 そこはごく狭い所なのですが、白鳥たちは餌採取ができるため、それに
 見合った羽数の子たちがその場所で越冬していきます。
 
 シベリアを発つときは何千羽もいたのですから、みんなと一緒に
 本州の暖かい湖へいけば、らくらくに越冬できるのに、どうして
 ここへ残ったのか不思議です。
 しかも、毎年同じ鳥が来ているわけでもないようなのです。
 もう長い間、偉い先生方が頭をひねっても、さかだちしてもわからない
 そうです。
 自分は勝手に「自分のために来てくれるんだよ」といっていますが、
 よそのジイサンに「アンタの生まれる遥か昔から来てるんだョ」と
 いわれると、黙ってしまいます。
 そして「アンタこそ なんでこんな寒い不便な所にいるんだョ」
 といわれてしまいます。

 鳥も人も、わからないことが多いです。
 だから面白いのです。
 それより、お日さまが顔をだしてくれますように。