今年の1月に特別注文を頂いた。以前、鷹の餌を入れる「口餌かご」を注文で作った人から、同じく「餌ふご」を作ってくれと言う。この人はまだ、30代であろうと思われるが、日本でも珍しい「鷹匠」だ。
依頼された、篭は鷹が取ってきた獲物を入れ、腰からぶら下げる篭だそうだが、私達にすれば、見たことも聞いたことも無い。唯一、東京の「日本民藝館」にその実物が飾ってあると言う。2月に、日本民藝館に見に行き、ガラスケースの中に入っているので触ることは出来ない。私と工房メンバーの遠藤君が見に行ったのだが、彼が、その時のスケッチだけでついに復元した。一見、見ると簡単そうな篭であるが、ところがどっこい、シンプルであればあるほど難しい。まず、厚みのある竹を均一に厚さ1ミリくらいまで薄くすることが大変である。
普段作っているヒゴのように、巾が数ミリの物であれば簡単に薄くすることが出来る。これは巾5センチもあるものを割れないように薄くするのだ。平たい物でなく、湾曲した半割の状態の竹の中身だけを根気強く、のみで削りこんでいく。厚さに不均一な部分があれば割れてしまうので、何度も何度も失敗をしながら。竹の粘りも問題である。新しい今年出たばかりの柔らかい竹を削らないといけない。最初は巾の広いヒゴを取るため、直径の大きな孟宗竹を削りこんだが旨くいかない。結局、柔らかさと弾力を併せ持った「真竹」で作ることになった。何度も何度も失敗しながら。
厚紙で模型を作り、大体の形を作っていく。粘り強く、根気の要る仕事だ。恐らく遠藤君自身も途中で何度もあきらめかけたようだ。しかし、200年前、江戸時代に作られた先人の技術に挑戦。一言で言えば簡単であるが、なかなかゴールまで辿り着くことは容易で無い。
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