久しぶりに発行されたのではないだろうか。しかし8人のメンバーの作品は大変に充実している。
タケイ・リエは3編を載せているが、その中の「片思い」。あなたに語りかける言葉は柔らかくうねる。「待ちに待った土曜日の夜は/分裂するほど念仏しよう」意味は不明なのだが、”分裂”と”念仏”がなんとなくリフレインのように響いて印象的である。
待ちに待った日曜日の朝です
ひとりでフルーツパーラーを訪ねる
喫茶店の入口には
だいたい不満が溜まっている
そのほとんどは
文字にあらわすと非常な感じがするが
定食屋で見かけることもある
片思いであるのだから、発せられた言葉は何の見返りも求めてはいないのだろう。ただ話者の中で豊かに膨らみ、それによって話者を支えていくのだろう。
高塚謙太郎「花へ」。この作品もあなたへの恋歌か。詩行には浮かれ立つようなリズムがあり、作品全体が弾んでいる。「窓は/のめる」、あるいは「かゆい初夏」など意味としては捉えにくい独得の表現もあるのだが、そんなものは軽快に跳びこえて読ませてしまう力も持っている。
きれいな緑
こうしてお互い手仕事に沈んでいく
わたしが語るのは
花の名まえを聞いていった
一枚わたし
ひらひらとぬれている
恋人よ
萩野なつみ「トワル」。「捻れながら泣いた/泣きながら運んだ」と始まる2章から成る作品。自分の存在はいつも仮の姿で「浅い春へと解体され」てしまうのだ。
はざまにしか ほんとう は無く
無釉の音符を散らして
鳴き交わす爪の
かそけき みちすじ
確かなものへの手がかりを必死にまさぐっているようだ。最終連は「生き延びた手で/ひとしれず転調しながら/かなしそうに/わらう」。仮縫いの生地をかけられ、自らはいつまでも目的地にたどり着くことのないトワルが切ない。
タケイ・リエは3編を載せているが、その中の「片思い」。あなたに語りかける言葉は柔らかくうねる。「待ちに待った土曜日の夜は/分裂するほど念仏しよう」意味は不明なのだが、”分裂”と”念仏”がなんとなくリフレインのように響いて印象的である。
待ちに待った日曜日の朝です
ひとりでフルーツパーラーを訪ねる
喫茶店の入口には
だいたい不満が溜まっている
そのほとんどは
文字にあらわすと非常な感じがするが
定食屋で見かけることもある
片思いであるのだから、発せられた言葉は何の見返りも求めてはいないのだろう。ただ話者の中で豊かに膨らみ、それによって話者を支えていくのだろう。
高塚謙太郎「花へ」。この作品もあなたへの恋歌か。詩行には浮かれ立つようなリズムがあり、作品全体が弾んでいる。「窓は/のめる」、あるいは「かゆい初夏」など意味としては捉えにくい独得の表現もあるのだが、そんなものは軽快に跳びこえて読ませてしまう力も持っている。
きれいな緑
こうしてお互い手仕事に沈んでいく
わたしが語るのは
花の名まえを聞いていった
一枚わたし
ひらひらとぬれている
恋人よ
萩野なつみ「トワル」。「捻れながら泣いた/泣きながら運んだ」と始まる2章から成る作品。自分の存在はいつも仮の姿で「浅い春へと解体され」てしまうのだ。
はざまにしか ほんとう は無く
無釉の音符を散らして
鳴き交わす爪の
かそけき みちすじ
確かなものへの手がかりを必死にまさぐっているようだ。最終連は「生き延びた手で/ひとしれず転調しながら/かなしそうに/わらう」。仮縫いの生地をかけられ、自らはいつまでも目的地にたどり着くことのないトワルが切ない。
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