第6詩集。61頁に24編を収める。
作品のタイトルは、厨房にある料理器具などの名前になっている。その器具たちの形状と役割が巧みに捉えられる。
たとえば「鍋」は、「くびれを持たない胴体と冠に戴く蓋/黙然と虚空に聴き耳を立てる把手一対」のものであると詩われる。そして調理に使われたあとは、
どんな夕餉が用意しえたか
ひとにぎりの磨きのずなをかかえ砂をかかえ
身には覚えの汚れの形跡を
まだ現れない新鮮へ丹念に転じていく
明日になればまた魚を煮るのに
わずかに寂寥の音を響かせて
事の始末をつけていく
たかが調理器具にここまでの大袈裟な表現を与える大真面目さが、この詩集の持ち味となっている。その結果、いつのまにか、調理器具は形而上的な意味を孕んだものに変容していくのいだ。
しかし基本的な役割としては、いうまでもなく厨房は調理の場である。そこでおこなわれるのは、人間の生命を保つために動物や植物の生命を奪う場である。そのために使われる器具には、それぞれに思うところもあるわけだ。
「樽」。樽は他の物を入れておく道具だが、そこには耐える時間もあるようだ。「蔵したものをはき出せ」ば軽くなり、楽になるぞと囁く声も聞こえるのだ。そんな樽は、
自らの重量を傾けて
横転し
ゆっくり転がっていく
日のとどかない
暗い方へ
斬新な発想と、対象に深く切り込んでいく思弁を味わう詩集だった。
作品のタイトルは、厨房にある料理器具などの名前になっている。その器具たちの形状と役割が巧みに捉えられる。
たとえば「鍋」は、「くびれを持たない胴体と冠に戴く蓋/黙然と虚空に聴き耳を立てる把手一対」のものであると詩われる。そして調理に使われたあとは、
どんな夕餉が用意しえたか
ひとにぎりの磨きのずなをかかえ砂をかかえ
身には覚えの汚れの形跡を
まだ現れない新鮮へ丹念に転じていく
明日になればまた魚を煮るのに
わずかに寂寥の音を響かせて
事の始末をつけていく
たかが調理器具にここまでの大袈裟な表現を与える大真面目さが、この詩集の持ち味となっている。その結果、いつのまにか、調理器具は形而上的な意味を孕んだものに変容していくのいだ。
しかし基本的な役割としては、いうまでもなく厨房は調理の場である。そこでおこなわれるのは、人間の生命を保つために動物や植物の生命を奪う場である。そのために使われる器具には、それぞれに思うところもあるわけだ。
「樽」。樽は他の物を入れておく道具だが、そこには耐える時間もあるようだ。「蔵したものをはき出せ」ば軽くなり、楽になるぞと囁く声も聞こえるのだ。そんな樽は、
自らの重量を傾けて
横転し
ゆっくり転がっていく
日のとどかない
暗い方へ
斬新な発想と、対象に深く切り込んでいく思弁を味わう詩集だった。
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