新井啓子の個人誌。11頁。
金井雄二が「詩の本の話をしよう」という連載コラムを書いている。今号は清水哲男詩集「野に、球。」で、金井が詩を書き始めたころからの大切な詩集とのこと。誰にでも、はっきりと理由は説明できないのに何度も立ち返る好きな詩集というものがあると思う。その感じがよく伝わってきた。
「軌跡」大木潤子は寄稿作品。
切れて、切られて、結われて、ほつれて、「意味の羽毛」はその役割を変えていく。話者には、音もなく波動のように伝わって行くものがあるのだ。最終部分は、
落ちてくるもの、
降ってくるもの、
を受け止める手のひら、
感覚はなく、
消えた虹の向こう、
蒸散する軌跡がある、
句点で行をつなぎながら、確かな形を取らないままに移ろっていくものを追っている。追いつくことはできないので、言葉が捉えるのはいつまでも軌跡の形なのだろう。
「影の人」新井啓子。
”*”で区切られた三章からなる。タイトルの”影の人”は「眠っていると 夜をめくってやって」きて胸の上にとまるのだ。はて、これは誰なのだろう? 閉じた瞼の奥には、春の光景や母の日には咲かなかったカーネーションが訪れる。
帰り道の三叉路にある 洋装店のウインドウの前には
荷物を提げて 母が立っていた
夕餉の食材を得たときのゆるく結ばれた口元
あそこから もうすぐ
「おかえり」が飛んでくる」
夜になると母は話者の胸の上にやってくるのだろう。そんなときには、話者が”おかえり”と言うのだろう。
金井雄二が「詩の本の話をしよう」という連載コラムを書いている。今号は清水哲男詩集「野に、球。」で、金井が詩を書き始めたころからの大切な詩集とのこと。誰にでも、はっきりと理由は説明できないのに何度も立ち返る好きな詩集というものがあると思う。その感じがよく伝わってきた。
「軌跡」大木潤子は寄稿作品。
切れて、切られて、結われて、ほつれて、「意味の羽毛」はその役割を変えていく。話者には、音もなく波動のように伝わって行くものがあるのだ。最終部分は、
落ちてくるもの、
降ってくるもの、
を受け止める手のひら、
感覚はなく、
消えた虹の向こう、
蒸散する軌跡がある、
句点で行をつなぎながら、確かな形を取らないままに移ろっていくものを追っている。追いつくことはできないので、言葉が捉えるのはいつまでも軌跡の形なのだろう。
「影の人」新井啓子。
”*”で区切られた三章からなる。タイトルの”影の人”は「眠っていると 夜をめくってやって」きて胸の上にとまるのだ。はて、これは誰なのだろう? 閉じた瞼の奥には、春の光景や母の日には咲かなかったカーネーションが訪れる。
帰り道の三叉路にある 洋装店のウインドウの前には
荷物を提げて 母が立っていた
夕餉の食材を得たときのゆるく結ばれた口元
あそこから もうすぐ
「おかえり」が飛んでくる」
夜になると母は話者の胸の上にやってくるのだろう。そんなときには、話者が”おかえり”と言うのだろう。