瀬崎祐の本棚

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詩誌「カルバート」 2号 (2023/03) 群馬

2023-03-13 00:15:37 | 詩集
樋口武二が編集・発行する”自由参加”誌。今号は80頁に13人が参加している。
所々の頁にはアメリカ議会図書館に保存されている古いポスター写真をカラーで載せている。今見ると大変にモダンな感じがする。

「呼ばれているのは、誰」野間明子。
起きようとしたら誰かがいるのだ。布団の中に巻き込んだのだが、なにも言わない。「ねえ、/誰なん?」と尋ねてみるのだが、

   やっぱりおかあさんだ でもなんの話しだろう 名前三つってなんだろう 誰? と
   三回呼んだからか 呼ばれるたび違う名前が呼び出されるのか 名前三つ持っている
   のはおかあさん、それかわたし?

難しい言葉はなにもないのに、差し出された状況は不可解だし、指し示し方もよく判らない。そもそも三つの名前というのがなにを指しているのかが不明のままで作品が続く。盛り上がった布団の中に閉じ込めたものは何だったのだろう。なにか怖ろしいものが待っているような雰囲気が漂っている。

「瀑布」金井裕美子。
「おびただしい数の/ネクタイが降ってくる」のである。それは「ほつれた糸を/飛び散らかしながら」滝つぼに堆積していくのだ。これはまたなんという光景であるだろうか。あまりのことに読む者もあっけにとられて、この状況を受け入れるしかないではないか。作品の後半は、

   息苦しさに
   滝つぼを覗きこむと
   けたけたと笑って
   もう戻れないわ
   足掻く女が
   真っ赤なネクタイに打たれながら
   呟いていた

話者は(そして読者も)いつまで傍観者でいられるのだろうか。あなたも滝つぼに降っていくことになるのではないだろうか。

樋口武二は写真と詩を組み合わせた「やさしい人について、」を載せている。NYパブリックライブラリーの4葉の写真に触発された作品なのだろう。写真をながめながら言葉を追うと、そこに付け加わるものが生まれてきていた。
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