瀬崎祐の本棚

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詩誌「SPACE」 172号  (2023/10) 高知

2023-10-17 23:01:54 | ローマ字で始まる詩誌
大家正志が隔月で精力的に発行している詩誌。72頁に26人の詩作品、2人の俳句、それにコラム、エッセイを載せている。

「給食ミルク」草野早苗。
苦手で飲みきれなかった学校給食のミルクを渡辺君は飲み干してくれていた。渡辺君はどんどん成長し、私は背が伸びないままだった。久しぶりに出会った渡辺君は「ごつごつした体格の市会議員になっていた」のだ。最終部分は、

   私はムスカリのままの背丈で
   いつもカルシウムとリンが不足していて
   旅先の修道院で庭掃除などしている

この肩すかしのようでいながら過不足のないストンとした着地はお見事。

「秋」木野ふみ。
月が、小川が、風が、変わる。虫たちも素直に、あるいは戸惑いながら交代していく。最終部分は、

   とてもすばやく移動して
   なにかがこっそり守られる

   秋のはじまりはいつもこんなもの

気がついたときには季節が移ろっている。その感じが手に触れるように巧みに描かれていた。

「このごろ」大家正志。
人を求めているのか、それとも人から遠ざかろうとしているのか。どちらの場合も根底にはおのれの弱さのようなものの自覚があるのではないだろうか。そんなことを考えさせる作品。真っ暗な夜になり、すべてを見なくてすむとほっとしたときに、

   そして
   ひと息つこうとしたとき
   自分が自分から出ていこうとしている気配に気づいて
   おもわず
   ノンノンと声をだしてしまった
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