瀬崎祐の本棚

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「島-パイパテローマ」 佐々木薫 (2017/12) あすら舎

2018-04-12 22:11:45 | 詩集
第8詩集。93頁に22編を収める。
4つの章に分かれた「Ⅰ」には「島」と題された連作8編。
島には港はなく、真っ昼間はなく、入り口もないという。そのように閉ざされた島には「明けない夜があるだけ」なのだ。だから島には「沈黙の固まりがあるだけ」なのだ。そこには歴史があり、そこから生まれた風習が人びとの生き方を規制しているのだろう。

   島は孤立無援の流刑地である。
   島はわたしが生きる根拠である。
   不条理な島を生きる不快と快感
   荒ぶる風波のなすままに、
   無防備の背中を日にさらし
   われとわが身を焼き焦がす

 それゆえに人びとにはパイパテローマが必要となったのだろう。パイパテローマとは波照間島の南方にあるという楽土のこと。「ここではない どこか」の謂いであるが、人びとにはそれを必要とする生き様があったということなのだろう。

沖縄在住の作者であるから、”島”が「様々な外圧に苦しむ沖縄である」(あとがきより)であることは容易にわかる。さらに作者の情動を促したのは「外的な状況をも含めた内的な「島」の存在である」とのこと。

 「芭蕉の葉がゆれる」など、どの作品もぶっきらぼうにも思える描き方であるが、真っ直ぐに訴えてくるものを孕んでいた。その強い感情が圧倒的な詩集であった。

   生きるに値するものは
   さらわれてしまった何か
   わたしの中から失われた重大な何か
   -泳いでいる
   -失われたもの
                   (「もぬけの浜」より)

コメント
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