瀬崎祐の本棚

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タンブルウィード 3号 (2018/03) 神奈川

2018-04-18 22:57:22 | 「た行」で始まる詩誌
B5版、83頁の存在感のある詩誌。表紙にあしらわれたベルトと腕時計の写真も澄んだセンスを感じさせる。同人9人にゲスト4人の作品を載せているのだが、ほとんどの執筆者が2~4編を発表しているので、読みでもある。

「森のコラージュ」宗田とも子。
腱盤をひとつ失くしたわたしはオルガン屋さんに謝っている。それは、オルガン屋さんが注いでくれた青い水の飲み物を飲んでいるときだったのだ。

   ひび割れたビン に夕陽が入りこむと
   オルガン屋さんは
   山を越そうと ついていけないほど走るので
   どうでもよくなって またベンチに戻りました

それからどうなったのか? 実は山はわたしのなかにあるので、わたしは「時々 裏側を走る ひとつ音のない足音を聴いてい」るのだ。わたしはすでに、大変に優しいけれども、逃げることはできない大きな物語に囚われてしまってもいるようだ。

「ラジオの日々」河口夏実。
4つの断章からなる作品。話者を囲む事物と、話者が内部に抱えているものが、言葉で取りだそうとしている内に混じり合っていくようだ。

   はがきいちまい
   絵を飾り、
   夢から覚めていくうちに
   ラジオをつける いまあるく道

そうして取りだされた日々は、うねりながらどこまでも続いていく。”ラジオの日々”は旅なのだろう。

「うさぎ島」斎藤恵子はゲスト作品。
この作品でも言葉は優しく降り積もっていく。それは、何もなかった海に次第に島ができ、何かを運んだりもするようになることなのだろう。

   みしることのないひとたちの
   あえいだ息が
   海ぞこにかさなり
   地図にない島から
   あし踏みのおとをたて
   舟は涯へいく

宙づりに風から聞こえてくる「中断の声声」も、わたしが言葉で作り上げていった島に寄せる波となるのだろう。
コメント
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