瀬崎祐の本棚

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別冊 詩の発見  17号  (2018/03)  大阪

2018-04-07 16:58:51 | 「は行」で始まる詩誌
「フレアスカート」林芙美子。
女は冷たい風にふるえている男を「長くたっぷりとした/フレアスカートの中へ」導き入れる。女はいつも男を受け入れるのだ。男はいつもそれに甘えてしまう。すると、

   そろそろ帰らなければなどと
   おっしゃるのですね
   難しいでしょうね
   お入りいただいたまま
   フレアスカートのすそを
   縫い合わせましたので

男は弱いものだから、ついつい甘えてしまい、いつも、いつまでも女の中に閉じこめられるのだ。

「渇きという地理の密度」松尾真由美。
乾いた花と葉はかたくなり、擦れあう痛みはにぶくひびく。張りつめたこの世界には、もはや安らぎもどこにも残っていないような気配がしている。その部屋からはもう出ることも出来ないような予感が満ちてきている。

   おだやかな温もりを感じていて
   あれはもう手に入らない
   ほらごらん
   握りしめれば
   くずれる葉

「フタ」高階杞一。
容器のフタは中のものがむやみにこぼれないように防いでくれるのだが、人間にはフタがないので「体から/激しくあふれてくるものがあっても/とめられない」。

   醤油の瓶のように
   傾けたときだけ
   思いを
   出せるようになっていればいいんだけれど

     ごめんね ごめんね

軽妙な比喩と語り口で素直に受けとれて、しかも深い所に余韻を残す作品。阿部嘉昭が近著で考察していたライト・ヴァースのお手本のような作品である。


コメント
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