「更地」飯島正治。
6行4連できっちりと書かれた作品。新聞社の建物が移転して、そこが更地になっている。かってそこに新聞社があった頃には、そこで「銃声の下の子供たちの見開かれた瞳」や「墜落する旅客機の乗客の震え」などのニュースが飛び交っていたのだ。そして私たちは「多くの人たちのうめき声を/聞こえないふりをして」、それらを単なるニュースとして送りだしていたのだ。毎日がそれこそめまぐるしく動き、立ち止まる暇もないほどにニュースが届き、何も考えられないままに送り出されて行っていたのだろう。しかし、今、そこが更地になってしまえば、
更地で風が行き場を失っている
破れた新聞紙が風に巻き上げられ
高い煙突の天辺へ運ばれていく
行き場を失くしていたうめき声が
虚空に吹き上げられ凍り始める
(最終連)
忙しい現場にいたときには気づかなかった事柄に、何もなくなった更地に立って初めて気づいている。新聞社の建物の中では錯綜するいろいろな夾雑物と、おそらくは周囲を圧倒していたであろう物音が、肝心のものを隠していたのだろう。しかし、何もなくなれば、突き当たるものもなくなり、風も行き場を失う。更地に佇んでいる気持ちも、虚空に舞い上がっているようだ。
6行4連できっちりと書かれた作品。新聞社の建物が移転して、そこが更地になっている。かってそこに新聞社があった頃には、そこで「銃声の下の子供たちの見開かれた瞳」や「墜落する旅客機の乗客の震え」などのニュースが飛び交っていたのだ。そして私たちは「多くの人たちのうめき声を/聞こえないふりをして」、それらを単なるニュースとして送りだしていたのだ。毎日がそれこそめまぐるしく動き、立ち止まる暇もないほどにニュースが届き、何も考えられないままに送り出されて行っていたのだろう。しかし、今、そこが更地になってしまえば、
更地で風が行き場を失っている
破れた新聞紙が風に巻き上げられ
高い煙突の天辺へ運ばれていく
行き場を失くしていたうめき声が
虚空に吹き上げられ凍り始める
(最終連)
忙しい現場にいたときには気づかなかった事柄に、何もなくなった更地に立って初めて気づいている。新聞社の建物の中では錯綜するいろいろな夾雑物と、おそらくは周囲を圧倒していたであろう物音が、肝心のものを隠していたのだろう。しかし、何もなくなれば、突き当たるものもなくなり、風も行き場を失う。更地に佇んでいる気持ちも、虚空に舞い上がっているようだ。