瀬崎祐の本棚

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蘭  68号  (2009/08)  広島

2009-09-14 21:56:18 | 「ら行」で始まる詩誌
 「げつかすいぼく」坂東里美。
 はて、漢字書くと「月下水木」なのだろうか、不思議な木だ。アブラゼミはウツボに恋をするし(しかも死んでいく)、そのアブラゼミを弔うのは蛸だ。そんな蛸の吸盤の脚の列が続く路地が、げつかすいぼくの葉波の中にあるのだ。
 お伽噺のように理屈が不要になった世界が展開されるのだが、その世界がどこまでも広がり続けるところがすばらしい。

    げつかすいぼく に今日は朝から 下方斜
   め二十八度から 大粒のアルマジロが降って
   いる アルマジロで河川が溢れるかもしれな
   い ので注意ください と枝に張られた 円
   錐形の蜘蛛の巣 からか細い声がして (以下略)

 途切れそうで途切れない息づかいが、うねうねとくねった物語をたどっていく。作品に悪意があるようにも思えないのだが、読んでいるうちに、いつの間にか身体の自由が利かなくなっているような、そんな気分にさせられる。
 それも快感のひとつである。
コメント (1)
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