「げつかすいぼく」坂東里美。
はて、漢字書くと「月下水木」なのだろうか、不思議な木だ。アブラゼミはウツボに恋をするし(しかも死んでいく)、そのアブラゼミを弔うのは蛸だ。そんな蛸の吸盤の脚の列が続く路地が、げつかすいぼくの葉波の中にあるのだ。
お伽噺のように理屈が不要になった世界が展開されるのだが、その世界がどこまでも広がり続けるところがすばらしい。
げつかすいぼく に今日は朝から 下方斜
め二十八度から 大粒のアルマジロが降って
いる アルマジロで河川が溢れるかもしれな
い ので注意ください と枝に張られた 円
錐形の蜘蛛の巣 からか細い声がして (以下略)
途切れそうで途切れない息づかいが、うねうねとくねった物語をたどっていく。作品に悪意があるようにも思えないのだが、読んでいるうちに、いつの間にか身体の自由が利かなくなっているような、そんな気分にさせられる。
それも快感のひとつである。
はて、漢字書くと「月下水木」なのだろうか、不思議な木だ。アブラゼミはウツボに恋をするし(しかも死んでいく)、そのアブラゼミを弔うのは蛸だ。そんな蛸の吸盤の脚の列が続く路地が、げつかすいぼくの葉波の中にあるのだ。
お伽噺のように理屈が不要になった世界が展開されるのだが、その世界がどこまでも広がり続けるところがすばらしい。
げつかすいぼく に今日は朝から 下方斜
め二十八度から 大粒のアルマジロが降って
いる アルマジロで河川が溢れるかもしれな
い ので注意ください と枝に張られた 円
錐形の蜘蛛の巣 からか細い声がして (以下略)
途切れそうで途切れない息づかいが、うねうねとくねった物語をたどっていく。作品に悪意があるようにも思えないのだが、読んでいるうちに、いつの間にか身体の自由が利かなくなっているような、そんな気分にさせられる。
それも快感のひとつである。