瀬崎祐の本棚

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幻竜  10号  (2009/09)  埼玉

2009-09-16 17:39:14 | 「か行」で始まる詩誌
 「なにか、」弓田弓子。
 短かく柔らかな言葉が、軽いリズムに乗って広げられていく。涙を右目の下にのこしたかのじょに会っている。おそらくかのじょは涙のわけなどを話したりしているのだろうが、涙はそんなかのじょの思惑を越えて存在している。そして、やがては、かのじょの顔にしがみついている涙そのものが、かのじょを越えた存在となってしまう。

   一粒が
   かのじょの顔になる
   ゆがんで
   今にも落ちそうにゆがんで
   こちらを見る
   なにか、なにか、
   なにか、
   なにも言えない、

 ここで私がなにか言おうとしている対象はかのじょではなく、涙そのものである。そして、この「なにか、なにか/なにか、」とたたみ込むような勢いのあとの、「なにも言えない、」という力の抜けるような最終部分が印象的だ。しかも「、」まで付いている。まだ、一呼吸置いているだけなのだな。言葉の外側で物語は、まだ続いている、
コメント
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