はぐれ遍路のひとりごと

観ながら歩く年寄りのグダグダ紀行

小笠山・六枚屏風

2011-10-29 17:17:20 | 低山歩き
 今年の6月に知人のMさんの案内で小笠山に登ったとき話が出た「六枚屏風」が気になっていたので行ってきました。

 六枚屏風とは砂利含みの山が雨水等によって浸食され、巾1m弱、高さは十数m、奥行きが30m程のチムニー状の沢のようですが、案内標識もなく分りにくい所にあるようです。
実際行ってみると確かに標識も無く予備知識がなければ見落としてしまいそうな場所にありましたが、そこは低山の小笠山にこんな奇観があるとは信じられない眺めでした。
大体小笠山自体は掛川駅からも近く、標高も264mしかない低山とも呼べないような山ですが、その谷は深く痩せ尾根が連続しており、谷底を覗き込むと身震いしてしまう程です。
しかしハイキングコースの山道はしっかりしていて、分岐点にも標識が完備されいるので迷う心配はありません。

 今回歩いたコースは六枚屏風をメインに138°展望台と小笠神社を加えたコースでしたが、少々距離が短くて13kmしかありませんでした。それでもこのコースは小笠山の魅力が一杯詰まったコースだと思います。


                  小笠山ルート図

掛川駅 ― 富士見霊園 ― 小笠トンネル ― 138°展望台 ― 小笠山 ― 小笠神社 ― 小笠山
     30分        20           8          45      10        10      

 ― 六枚屏風 ― 農道出合 ― 県道38号 ― 掛川駅
 10        25        40        20分


 今回はこのブログを見ている方に是非歩いてほしいので道案内をメインに報告します。

掛川駅南口(新幹線側)を下車し、駅前にあるグランドホテル前を通り次の交差点を右折する。
ガソリンスタンドのある交差点を直進し次の信号を左折する。道路標識に「富士見霊園」の案内がある。
東名高速のガードを潜り、少し行くと右側に掛川東高校が見えてくる。そのまま道なりに坂道を登っていくと


 ハイキングコース案内板                 富士見霊園入口

今度は左に小笠山ハイキングコースの案内板が立っているが、今回をそれを無視して車道を直進する。
駅から30分ほどで富士見霊園に到着。ここにはトイレがあるので利用すると良い。
さらに霊園内には入らず車道を直進すると県道403号の信号に出る。そのまま県道を横断し更に急になった
車道を南へと進んでいく。
この道は車の量は少ないが、たまに下ってくる車はスピードが出ているので道端を歩く等充分に注意してください。


 小笠トンネル                         ハイキングコース入口

前方にトンネルが見えて来たら今日最大の急登はすでに終りで、あとは快適な尾根歩きになります。
トンネルを抜けて南に出たら右側にある「ごみ捨て禁止」の看板と虎テープを張ってある所から山道に入る。
そこにはハイキングコースの案内板も無く、少し不安も感じたが、このロープはゴミ捨ての人の進入禁止だと勝手に解釈してロープ脇から山道に入った。
すぐ尾根に出ると、そこには法多山・エコパ  小笠山の案内標識が立っていた。これで一安心。序に正面を覗き込むと急斜面というか崖になっている。なぜこんな崖?と少々腑に落ちなかった。

「ここは東経138°線上」「日本を東西に分ける中心線です」の看板が立っていた。
東経138°が日本の中心かどうかは知らないが、このあたりが東経138°である事は国土地理院の地図で確認したから間違いないようだ。案内板には138°線が小笠山から諏訪湖を通り上越市に抜けるイラストも描いてあった。
その案内板を過ぎると右側に「展望台」の標識が立っているので見落とさないで必ず寄ってください。



その「138°展望台」からはご覧のように掛川や袋井の市街が一望でき、その背後には遠州の山々が見えました。天候に恵まれれば南アルプスや富士山も見えるそうです。しかし今日は残念ながら富士山は見えません。天気は良いのですが遠くが霞んでしまっていました。
日本の中心線から138°展望台と名付けたのだろうが、視界が180度あるから180°展望台でも良さそうな気がした。

展望台からは小笠神社や小笠山の道標に従い尾根道を行く。途中何ヶ所か分岐があるがそれぞれに道標があり迷う心配はない。感じの良い山道が続くが道の東(左)側は崖になっているので注意が必要だ。



こんな看板もあり、余りの痩せ尾根にはこんな橋もついていた。



何故小笠山は低山なのに急峻な崖が多くあるのか気になったので調べてみるた。以下受売りで紹介すると。

「日本列島がまだ大陸と陸続きだった100万年以上昔、海の底だった海底には泥層の堆積物(掛川層群)が溜まっていった。その後この辺りが隆起して陸地になると、大井川が流れ出し上流から運ばれた土砂が堆積して小笠層群(石が地層の中にある)となった。長い年月の間に気候や地殻変動、地震などにより隆起や侵食を繰り返して現在の小笠山がつくられた。北東側に分布する掛川層群は侵蝕されやすいため急峻な崖となり、南西側に広がる小笠層群は比較的固い礫層のため、ゆるかな傾斜となっている」

スーと読めば何となく納得してしまうが、南西側に大井川の砂利が溜まり北東側には砂利が無い理由が今一納得できない。現在の大井川は小笠山の東を流れているのだから北東側に砂利が溜まるはずなのに?
若しかすると大井川でなく西を流れている天竜川がこの地を流れていたのではないか?などと疑問を感じてしまった。


 砂利の層が剥き出している

 静岡の低山といえば山の麓はお茶やミカンが栽培され、上の方は杉や桧が山頂まで植林されている山が多い。だがこの小笠山はトンネルを潜り山道になってからは人工的に植栽されている物はなかった。これも山が急峻なため市街地から近く、さらに標高も低いのに開発されなかった理由だろう。お陰でこうして自然林の中を気持ちよく歩く事が出来る。
尾根に出ると樹皮が縦方向にひび割れているウバメガシ(姥目樫)が目に付いた。この木は備長炭の原料なのだから、この辺りでも炭焼きをやっているのだろうか。余り聞いた事はないが ------


 三角点                              山頂から南東の眺め

 幾つか分岐を過ぎて小笠山の山頂に着く。山頂には4等三角点があるが視界は利かない。三角点の後に延びる道を行くと木陰から南東側の景色を見る事が出来た。

 
 高札?                            アカガシの大木

 三角点に戻り下り始めた道を進むと少し広がった所に出る。そこには高札のような物が立っていて
「車馬乗入れ、鳥獣捕獲、植物採取、火の用心」などの禁止項目が書かれていた。その横には大きなアカガシ(赤樫)の木が立っていて案内もあった。

この辺り一帯は、徳川家康が今川方の掛川城や武田の高天神城を攻める時に砦を築いた場所と案内板で紹介してある。確かに断崖絶壁の多いこの山なら山城としては難攻不落な砦となるだろう。しかし細い痩せ尾根の道では攻撃の移動の際、充分な機動力を活かせるのだろうか。とは言っても掛川城は降参して開城し、高天神城は兵糧攻めのあと、城から討って出た武田群を壊滅している。
俄歴史家の私の判断は、この小笠砦は攻撃の為の砦ではなく、家康の身を守る為の砦で謂わば御殿のような物だ。それが証拠には「笹峰御殿跡」なる案内板もあった。

 アカガシの所から太い参道が小笠神社まで続いていて、途中に東屋のある展望台があるが138°展望台を見た後では見劣りがする眺めだった。
小笠神社が建っている場所は尾根の先端の上部を平らにしたような場所で、それこそ砦とか櫓に適した所だった。社務所前のベンチからは南に広がる遠州灘を眺める事ができ、神社の前のケーブルの所からは浜岡原発も見えていた。

 
  小笠神社

 普通なら神社から南に下って小笠山を縦断するところだが、今日はメインの六枚屏風がまだ残っている。そこで小笠山から南西部は次回にして今日はここから三角点まで引き返すことにした。


 三角点直下の分岐点                    六枚屏風の下り口

 三角点を過ぎ道が下りになると六枚屏風への入口である板沢分岐にでる。標識には「板沢方面→」とあり六枚屏風の表現は無いがそこを下っていく。尾根道から離れ急に薄くなった山道も30mも行くと下りの尾根道になり、そこからはまたハッキリした道が続くので心配は無い。途中左側にロープを張った場所もあるので注意深く下っていく。
ロープ場を過ぎてすぐの所の左側に「小笠山→」の標識があるが、これを見落としてはいけない。尾根道から右の沢に降りる道が薄く付いているが、それが六枚屏風の入口になる。他に標識は無いが入口の木の枝にはナイロンテープがぶら下っていた。
六枚屏風への道は危険ではないが、道は細く整備もされていないのでユックリ下っていく。20mも下るのだろうか沢に出ると正面に岩と岩との裂け目が見えた。

  
 六枚屏風入口                    六枚屏風の内部

 この裂け目いや裂け目ではなく右と左の岩は離れていたので岩の間を進んでいくのだが中は薄暗くなっていた。
今日は歩き始めてから誰とも会っていない、一人ぽっちの山の中で、しかも薄暗い洞窟のような中に入るのに若干の不安を覚えた。この先に蛇やコーモリはいないか、猪や熊の住処になっていないかなど弱気な気持ちも湧き上がってきた。だがそんな不安より好奇心の方が数段勝っていて躊躇無く岩の間に入っていった。

 岩と岩の間は1mもなく、両肘を広げれば付くくらいの広さなので、ロッククライミングをやる人ならチムニーを登るようにすれば上部にも登れそうだ。岩の底には水溜りがあり雨が降れば沢になって水が流れるのだろう。その水が岩を穿ちこの様な景観を産んだのだから年月とは凄いものだと改めて感心する。
途中に大分古い倒木があり前方を塞いでいた。だが左右の岩にはホールドやスタンスになる石が一杯飛び出しているので、難なく倒木を乗り越え更に奥に進むことができた。

 確かこんな岸壁を四国の45番札所岩屋寺の下で見た事がある。それは河原から突然突き出し立っている土柱のような物で、その肌は泥の間に石が挟まっているように見え汚い感じだった。だがここの岩肌はそれに比べればスベスベしていて汚さは感じない。また、挟まっている石もしっかり固まっていて容易に抜けるようではなかった。

 入口から最奥部まで30mはあっただろうか、行止まりになった所で引き返すと入口が明るくなって岩の間から光りが見えていた。

  
   六枚屏風内部から入口を見る

 尾根に戻り何故六枚屏風の標識が無いのか考えた。きっと山道の管理者は六枚屏風への道を危険と判断し標識を付けなかったのだろう。それを私がブログで紹介してしまって良いものなのか?
少し気にはなるが、この位の道はどの山でもある道で特に危険とは思えない。と判断して紹介してしたので、行かれる方は注意して歩いてください。

 六枚屏風から尾根道を気持ちよく下っていく。途中の分岐は左に向かう板沢方面に進めば掛川駅に近くなります。


 農道出合                           旧道のトンネル

 尾根が突然無くなり農道に出合った。あとはこの道を北東方向に進んで行き県道38号の信号に出たら県道を横断してから左折する。右手に旧道が始まるのでその道に入れば車のの少ない旧道歩きが出来る。

 今回紹介したコースは私としてはお薦めコースです。ただチョト距離が短く物足りないので次回は小笠神社から小笠池に下りトンネルを通って無線中継所に出てから六枚屏風に行くコースを歩こうと思っています。時季は紅葉するしないは分からないが11月下旬を狙っています。

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2 コメント

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六枚屏風 (ヒロボー)
2012-11-26 16:30:39
実に詳しい六枚屏風への案内です。

昨年の11月中旬に
私が、六枚屏風への下り口に看板を立てましたので
誰でもよくわかるかと思います。
下る途中からタイガーロープも取り付けましたので
安全に六枚屏風に下りられます。

このブログを書いたのが
10/29ですので、その時には看板がありませんでした

この
六枚屏風は一見の価値あり
みんなに見ていただきたいものです。


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六枚屏風 (はぐれ)
2012-11-26 19:52:04
ヒロボーさんコメントありがとうございます。と、それ以上に道標の設置には感謝です。
皆様の奉仕の結果、楽しく安全に歩けるのに私はただ歩くだけで申し訳なく感じています。
ありがとうございました。

私も昨年歩き納めに小笠山に行って、六枚屏風への標識を見ています。
あれならだれもが六枚屏風を見落とすことは無いと思います。
その時の記事は2012/1/31に書きました。

http://blog.goo.ne.jp/syuji_1944/e/2336d6d391e718f0f16c7c4bb648441e
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