みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

贔屓の引き倒し

2018-12-27 12:00:00 | 検証「Wikipediaの高瀬露」
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》

鈴木 では今度はこれだ。


賢治は露を追い払うため、顔に灰を塗って面会したこともあり、わざとぼろをまとって乞食のような姿で露の前に現れる、などの努力を繰り返した[10:p.153]。また「私は癩病ですから」と嘘をついたこともあるが、露はこの言葉を聞いて同情し、かえって賢治への執着心を強めた[11:p.153-154]。このことが地元で注目を集め「賢治さんのところに、近ごろ、長い髪のばけものが出る」と噂になったこともある[12:p.137]。

 では最初に、「賢治は露を追い払うため、顔に灰を塗って面会したこともあり、わざとぼろをまとって乞食のような姿で露の前に現れる、などの努力を繰り返した[10:p.153]」の部分だが、[10:p.153]に当たるのが例のリストの中では、
(24) ×賢治が奇矯にふるまっても、露はいっこうにおそれない。恋する女には効き目がないのだ。(153p)
だけだ。
吉田 たしかに、「顔に灰を塗って面会したこともあり、わざとぼろをまとって乞食のような姿で露の前に現れる」という行為は奇矯だわな。しかし、澤村氏の「ふるまっても」という表現からは、賢治のこのような一連の奇矯な行為を同氏はあまり責めてはおらず、どちらかというと好意的に見ているということが僕からは窺える。
荒木 しかも、「恋する女には効き目がないのだ」という言い方も変だべ。まるで賢治の奇矯な行為であるならばそれは別格で、露に対してならば正当だということを言いたげだじゃ。
吉田 さらには、今度もまた「Wikipediaの高瀬露」の編集者は話を膨らまして、「努力を繰り返した」と断定している。
荒木 ほんとに何言ってんだが。なんでこんな奇矯な行為を繰り返したことを「努力を繰り返した」と言えるんだべ。俺は開いた口がふさがらないね。
鈴木 たしかに、賢治が「顔に灰を塗って面会したこともあり、わざとぼろをまとって乞食のような姿で露の前に現れ」たという風聞はある。そして何人かの人がそのような証言もしている。しかしな……
荒木 ならばこの奇矯な行為を賢治が実際に為していた可能性が究めて大だべ。だったらら、まず批難されるのは普通はその奇矯な行為を為した賢治本人だろうに。
鈴木 ところが、そのような賢治を強く叱責や批難をしている人としては父の政次郎以外に私は知らない。なお、これに関しては、「Wikipediaの高瀬露」の編集者も次のように、

と述べているし、この出典は『宮澤賢治幻の恋人』の152~158pであるとも言い添えている。
吉田 ならばなおのこと、澤村氏もこの編集者も、中立性と公平さを心懸けてほしいのだが、現実にはこのお二方には中立性に欠け、公平でもないから鈴木は怒りをこめて灰色で塗りつぶしたというわけだ。尤もなことだ。
荒木 そして少なからぬ賢治研究家に対してもな。
鈴木 おいおい、私はそんなところに対してまでは思ってないぞ……でもちょっぴりは、一部の方々はアンフェアじゃないかなと思わないわけでもないけどね。
荒木 おっとっと!
鈴木 どうした。
荒木 俺気付いたんだ。冷静になって今回のことを振り返ってみると、こんな奇矯なことまでやったのは「賢治は露を追い払うため」だったということをこのお二方は強調していることになるわけで、結果的にはとんでもない贔屓の引き倒しをしていることになるということにだ。
吉田 荒木鋭いじゃないか。賢治自身はそのためにこのような奇矯な行為をしたのかどうかは僕には測りかねるが、もしこのお二方が言う通りであったとすれば、あれだけ何くれと世話になり、少なくともある一定期間は良い関係にあった女性に対して手のひらを返す行為を賢治がしていたということをこの二方は言っていることになるからな。たしかに贔屓の引き倒しだ。
荒木 はしなくも、この二方は
   賢治は男の風上にも置けぬやつだ!
と声高に言っているということなりかねないからね。
鈴木 なるほどね。ということは、お二方よもっと父政次郎の叱責を重く捉えて下さい、と私はお願いしなければならないうことか。
吉田 現実には、我々の話をこのお二方に伝えるのは無理としても、どうかこの声が伝わっていってほしいものだ。

 続きへ
前へ 
 「“検証「Wikipediaの高瀬露」”の目次」へ移る。
 ”みちのくの山野草”のトップに戻る。
*********************************************************************************************************
 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「賢治を困らせた」それとも「賢... | トップ | ジョバンニはガリレオの友人 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

検証「Wikipediaの高瀬露」」カテゴリの最新記事