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ここにもまた不公平があった

2019-01-04 14:00:00 | 検証「Wikipediaの高瀬露」
《『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)》

鈴木 さて、以上で背景を塗りつぶした部分の考察は全て終わったのだが、次の部分がやっぱり気になるんだよな。


また、賢治の詩「最も親しき友らにさへこれを秘して」における

あらゆる詐術の成らざりしより
我を呪ひて殺さんとするか
然らば記せよ
女と思ひて今日までは許しても来つれ
今や生くるも死するも
なんぢが曲意非礼を忘れじ

という一節も露への怒りを詠った詩とされる[16:p.160-161]。
荒木 それはまたなんでだ。
鈴木 最後にご丁寧に「とされる」と尻尾が付けられているから、伝聞程度のものであり、断定しているわけではないからと思って最初は割愛したのだが……
吉田 おいおい、忘れたのかこの詩〔最も親しき友らにさへこれを秘して〕については、以前3人であれこれと考察したことを。
鈴木 まずい、すっかり忘却のかなただ。
荒木 やべぇ、認知症だべが。
吉田 それはほら、〔聖女のさましてちかづけるもの〕について3人でああだこうだと話し合った際に、僕がこれと似たような詩として「文語詩未定稿」の中の詩〔最も親しき友らにさへこれを秘して〕があると言い出したことがあっただろう、その詩がこれだよ。
鈴木 あっ、そうそうそうだった。すっかり忘れてしまってた。
 それでは気を取り直して、まず、[16:p.160-161]に該当することを例のリストから拾ってみよう。それは一つだけあって次のとおり。
(31) ?露については、賢治の周囲にその行動をこころよく思っていなかった者が多かった。(161p)
荒木 しかも〝?〟付きかよ。
鈴木 そう、念のために言えば、
 ?印については誰かが言ったいうことになっているが、それはただ一人のそれであり、当然それだけではそのことを根拠にして断定はできないというもの。
だ。
吉田 これではちょっと見えてこないな。すまん鈴木、『宮澤賢治幻の恋人』の160p~161pに関連するどんなことが書いてあるか教えてくれ。
鈴木 それもそうだな、どれどれ、こんなことが書いてある。
「彼のような上品な人間は、告げ口などという下品なことはしたことがないから、上手な告げ口にすぐ乗るのである。「聖女のさましてちかづけるもの」の詩は、まさしくこの種の告げ口(告げ口として常套な誇張と悪意による)によつて成つたものである」
 賢治のいかりは、詩「最も親しき友らにさへこれを秘して」に、より直截にあらわれている。以下はその一部である。

   あらゆる詐術の成らざりしより
   我を呪ひて殺さんとするか
   然らば記せよ
   女と思ひて今日までは許しても来つれ
   今や生くるも死するも
   なんぢが曲意非礼を忘れじ
   もしなほなれに
   一分反省の心あらば
   ふたゝびわが名を人に言はず
   たゞひたすらにかの大曼荼羅のおん前にして
   この野の福祉を祈りつゝ
   なべてこの野にたつきせん
   名なきをみなのあらんごと
   こゝろすなほに生きよかし

 こちらも露のことを書いたように思われる。それにしても、ここまでいかりをあらわにする賢治はめずらしい。温厚で善良な賢治が「なんぢが曲意非礼を忘れじ」とまで記すのだから、ただごとではない。逆鱗に触れた、といってもよい。 
 しかし、これも「告げ口」がつくりだした妄想の所産だったかもしれないのである。
           〈『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)160p~〉
荒木 そっか、「Wikipediaの高瀬露」の編集人の記述も伝聞程度だが、澤村氏の記述も「こちらも露のことを書いたように思われる」というように推測だから、こちらも断定していない。
 さらには、「妄想の所産だったかもしれない」というように、問題は賢治そのものにあったのだという可能性まで澤村氏は言及してるんだ。こりゃあびっくりだな。
鈴木 まずい、しくじってしまった。
吉田 な、「Wikipediaの高瀬露」の編集者も、澤村氏もそれぞれ伝聞や推測だから出典の使い方としては問題がなさそうに見えるが、両者には決定的な違いがあり、
 澤村氏と違って、「Wikipediaの高瀬露」の編集者は出典の重要な記述である「これも「告げ口」がつくりだした妄想の所産だったかもしれないのである」、つまり、〔最も親しき友らにさへこれを秘して〕も〔聖女のさましてちかづけるもの〕同様「賢治の妄想によって詠まれた詩であるものかもしれない、ということに言及していない
わけだから、ここにも不公平がある
荒木 ということは、ここでもまた、「Wikipediaの高瀬露」の編集人は出典を恣意的に使っているということを否定できないか。つまり、賢治にとって不都合な点には触れておらず、その結果、露の方だけが悪者であったという印象を与える内容になっているってことだべ。
鈴木 たしかにここにも不公平があったのだが、ついつい見落としていた。本来ならば、この部分も灰色で塗りつぶすべきだったのだ。
荒木 それにしても、この「Wikipediaの高瀬露」の編集の仕方には問題点があまりにも多すぎることに、改めてびっくりだ。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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