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『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』の中の第三章は、
私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露― 鈴木 守
である。ここからはその中身を項目順に投稿してゆきたい。
Ⅲ 私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―
一はじめに
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〝「私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―」の目次(改訂版)〟
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―賢治と〈悪女〉にされた露―
鈴木 守
一 はじめに
宮澤賢治が生前血縁以外の女性の中で最も世話になったのが高瀬露である。ところが現実は、露はとんでもない〈悪女〉にされていて、いわゆる〈高瀬露悪女伝説〉が全国に流布しているというのが実態である。しかし、少しく調べてみただけでもそうとは言えなさそうであることに私は気付く。
たとえば、賢治の主治医だったとも言われている佐藤隆房は、
桜の地人協会の、会員といふ程ではないが準会員といふ所位に、内田康子(高瀬露:筆者註)さんといふ、たゞ一人の女性がありました。…(筆者略)…
来れば、どこの女性でもするやうに、その辺を掃除したり汚れ物を片付けたりしてくれるので、賢治さんも、これは便利と有難がつて、
「この頃は美しい会員が来て、いろいろ片付けてくれるのでとても助かるよ。」
と、集つてくる男の人達にいひました((一))。
と述べていて、これに基づけば、露は〈悪女〉どころかその逆である。さらに、『新校本宮澤賢治全集第六巻詩Ⅴ校異篇』によれば、
この歌の原曲は…(筆者略)…「いづれのときかは」で、賢治が愛唱した讃美歌の一つである。宮沢清六の話では、この歌は賢治から教わったもの、賢治は高瀬露から教えられたとのこと((二))。
ということだから、賢治の弟清六は、賢治は露から讃美歌を教わっていたということを証言していたことになる。また清六は、
私とロシア人は二階へ上ってゆきました。
二階には先客がひとりおりました。その先客は、Tさん(高瀬露:筆者註)という婦人の客でした。そこで四人で、レコードを聞きました。…(筆者略)…。レコードが終ると、Tさんがオルガンをひいて、ロシア人はハミングで讃美歌を歌いました。メロデーとオルガンがよく合うその不思議な調べを兄と私は、じっと聞いていました((三))。
ということも証言している。
つまりこれらの証言等からは、賢治は露からとても世話になっていたということや、当時、賢治と露はオープンで親密なよい関係にあった、ということが導かれる。
そしてもう一つ大事なことがある。それは、露は一九二一年(一九歳の時)に洗礼を受け、遠野に嫁ぐまでの一一年間は花巻バプテスト教会に通い、結婚相手は神職であったのだが、夫が亡くなって後の一九五一年にカトリック遠野教会で洗礼を受け直し、「五〇年の長きにわたって信仰の生涯を歩み通した」クリスチャンであった((四))、ということがである。
したがってこれらのことから判断すれば、露が〈悪女〉にされるということは常識的には考えにくい。
******************************************************* 以上 *********************************************************
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ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているという。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。
おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
一方で、私は自分の研究結果には多少自信がないわけでもない。それは、石井洋二郎氏が鳴らす、
そして実際、従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと言われそうな私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、なおさらにである。
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であり、その目次は下掲のとおりである。
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〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守 ☎ 0198-24-9813
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私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―
鈴木 守
一 はじめに
宮澤賢治が生前血縁以外の女性の中で最も世話になったのが高瀬露である。ところが現実は、露はとんでもない〈悪女〉にされていて、いわゆる〈高瀬露悪女伝説〉が全国に流布しているというのが実態である。しかし、少しく調べてみただけでもそうとは言えなさそうであることに私は気付く。
たとえば、賢治の主治医だったとも言われている佐藤隆房は、
桜の地人協会の、会員といふ程ではないが準会員といふ所位に、内田康子(高瀬露:筆者註)さんといふ、たゞ一人の女性がありました。…(筆者略)…
来れば、どこの女性でもするやうに、その辺を掃除したり汚れ物を片付けたりしてくれるので、賢治さんも、これは便利と有難がつて、
「この頃は美しい会員が来て、いろいろ片付けてくれるのでとても助かるよ。」
と、集つてくる男の人達にいひました((一))。
と述べていて、これに基づけば、露は〈悪女〉どころかその逆である。さらに、『新校本宮澤賢治全集第六巻詩Ⅴ校異篇』によれば、
この歌の原曲は…(筆者略)…「いづれのときかは」で、賢治が愛唱した讃美歌の一つである。宮沢清六の話では、この歌は賢治から教わったもの、賢治は高瀬露から教えられたとのこと((二))。
ということだから、賢治の弟清六は、賢治は露から讃美歌を教わっていたということを証言していたことになる。また清六は、
私とロシア人は二階へ上ってゆきました。
二階には先客がひとりおりました。その先客は、Tさん(高瀬露:筆者註)という婦人の客でした。そこで四人で、レコードを聞きました。…(筆者略)…。レコードが終ると、Tさんがオルガンをひいて、ロシア人はハミングで讃美歌を歌いました。メロデーとオルガンがよく合うその不思議な調べを兄と私は、じっと聞いていました((三))。
ということも証言している。
つまりこれらの証言等からは、賢治は露からとても世話になっていたということや、当時、賢治と露はオープンで親密なよい関係にあった、ということが導かれる。
そしてもう一つ大事なことがある。それは、露は一九二一年(一九歳の時)に洗礼を受け、遠野に嫁ぐまでの一一年間は花巻バプテスト教会に通い、結婚相手は神職であったのだが、夫が亡くなって後の一九五一年にカトリック遠野教会で洗礼を受け直し、「五〇年の長きにわたって信仰の生涯を歩み通した」クリスチャンであった((四))、ということがである。
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ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているという。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。
おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
一方で、私は自分の研究結果には多少自信がないわけでもない。それは、石井洋二郎氏が鳴らす、
あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること
という警鐘、つまり研究の基本を常に心掛けているつもりだからである。そしてまたそれは自恃ともなっている。そして実際、従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと言われそうな私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、なおさらにである。
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そのようなことも訴えたいと願って著したのが『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))
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であり、その目次は下掲のとおりである。
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