みちのくの山野草

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『校本全集第十四巻』と『事故のてんまつ』

2021-11-24 18:00:00 | 「賢治年譜」等に異議あり
《『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版)の表紙》

 さて、「今後は歴史に委ね、焦らずに俟っていればいいのだ……投稿者略……私はある時点まではこのように考えていた」のだが、あることが切っ掛けで私はその考え方を変えた。俟っていてばかりではいけないのだ、とである。それは、筑摩書房の社史に、「倒産直前の筑摩書房は腐りきっていました」と書いてあったことを知ったことによってだ。それも、「腐っていました」ではなくて、「腐りきっていました」と書いてあったからである。
 
 そんなある日のこと、私はこのことに関して高橋征穂(露草協会会長、古書店「イーハトーブ本の森」代表)先輩とおおよそ次のようなことなど、
鈴木 実はこの度このような本、筑摩の社史『筑摩書房 それからの四十年』を手に入れました。これによるとここに、
   一九七八(昭和五三)年に筑摩書房が「倒産」
と書いてあります。
高橋 そうそう、その頃の筑摩はどうかしていた。臼井吉見が、川端康成の自殺を題材にした小説『事故のてんまつ』を筑摩から出版したのだが、それが問題作で、筑摩と川端家との間ですったもんだがあったりしたからな。
鈴木 しかも同社史には、「倒産直前の筑摩書房は腐りきっていました」と、はっきりと書いてありましたので、まさに「腐りきって」いた昭和52年の出版だったのだと知り、私は愕然としました。
高橋 おぉ、「筑摩書房は腐りきっていました」と書いてあったか。自社の社史によくぞそこまで書けたな。筑摩は昭和53年に倒産したのだし、昭和52年は倒産直前となる。しかもあの『事故のてんまつ』は臼井吉見らしからぬちょっとお粗末な作品だったから、『事故のてんまつ』の出版は「腐りきって」いたことの一つの現れだったとなりそうだ。
鈴木 ところで、『事故のてんまつ』が出版された52年に、同じく筑摩から出版された賢治関連の本がありますが、さてそれは何でしょうか。
高橋 その頃といえば、旧校本全集が出版されていた頃だから、その第何巻かだろう。
鈴木 はい。どうも「新発見」とは言い難く、そうではなくて、高瀬露が亡くなるのを待って公表したとつい思いたくなってしまうんですが、新発見の書簡252c」とセンセーショナルに表現して、関連する賢治の書簡下書群を公にした第十四巻です。
 そして、一般人である女性「高瀬露」の実名を顕わに用いて、「252cは内容的に高瀬あてであることが判然としている」と、その客観的な典拠も明示せずに、一方的に決めつけた第十四巻です。
 その上に、「推定は困難であるが、この頃の高瀬との書簡の往復をたどると、次のようにでもなろうか」と前置きして、「困難」なはずのものにも拘わらず、想像力豊かに推定し、スキャンダラスな表現も用いながら、人権侵害等の虞がある推定を延々と繰り返した推定群⑴~⑺を公開した同巻です。
 つまり、第十四巻はとんでもない横車を押していたのです。
高橋 おっ、かなり怒り心頭だな。
鈴木 だって、この「新発見の書簡 252c」等の公開と、「絶版回収事件」はともに倒産直前の昭和52年に起こっていることを始めとして、ほぼ同じ構図にあります。
高橋 はたしてそこまで言えるかな。
鈴木 はい。その他にも次のようなことが言えるからです。
・両者とも、当事者である川端康成(昭和47年没)、高瀬露(昭和45年没)が亡くなってから、程なくしてなされました。
・その基になったのは、ともに事実ではないです。前者の場合は「伝聞の伝聞そのまた伝聞」で、後者の場合は賢治の書簡下書を元にして、推定困難なと言いながらも、それを繰り返した推定群⑴~⑺だからです。
・ともに、故人のプライバシーの侵害・名誉毀損と差別問題があります。
・ともに、スキャンダラスな書き方もなされています。
 よって、この二つはほぼ同じ構図にあります
高橋 分かった分かった。ということであれば、たしかにそう言えるだろう。しかし、『事故のてんまつ』の出版は「腐りきって」いたことの一つの現れだとしても、『校本全集第十四巻』の出版までもがそうだったとは言い切れんだろう。
を話し合った。

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《ご案内》
 来る12月16日付で、新刊『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))を発売予定です。
【目次】

【序章 門外漢で非専門家ですが】

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