《羅須地人協会跡地からの眺め》(平成25年2月1日、下根子桜)
著者でない者が改稿して出版した『賢治随聞』
さらに、『賢治随聞』には次のような問題点があることも知った。それは、昭和45年出版の同書の著者名が「関登久也」となってはいるものの、実は関自身が出版したものではなかったという問題点がである。関は疾うの昔の昭和32年に亡くなっていたからだ。
ではなぜこのような不自然なことが為されたのか。そのことについては、森荘已池が書いた同書の次のような「あとがき」が教えてくれている。
宗教者としては、法華経を通じて賢治の同信・同行、親戚としても深い縁にあった関登久也が、生前に、賢治について、三冊の主な著作をのこした。『宮沢賢治素描』と『続宮沢賢治素描』そして『宮沢賢治物語』である。…(投稿者略)…
さて、直接この本についてのことを書こう。
『宮沢賢治素描』正・続の二冊は、聞きがきと口述筆記が主なものとなっていた。そのため重複するものがあったので、これを整理、配列を変えた。明らかな二、三の重要なあやまりは、これを正した。…(投稿者略)…
なお以上のような諸点の改稿は、すべて私の独断によって行ったものではなく、賢治令弟の清六氏との数回の懇談を得て、両人の考えが一致したことを付記する。
〈『賢治随聞』(関登久也著、角川書店、昭和45年)277p~〉さて、直接この本についてのことを書こう。
『宮沢賢治素描』正・続の二冊は、聞きがきと口述筆記が主なものとなっていた。そのため重複するものがあったので、これを整理、配列を変えた。明らかな二、三の重要なあやまりは、これを正した。…(投稿者略)…
なお以上のような諸点の改稿は、すべて私の独断によって行ったものではなく、賢治令弟の清六氏との数回の懇談を得て、両人の考えが一致したことを付記する。
つまり、宮澤清六と懇談の上で、森荘已池が関の既刊の著作を改稿して出版したのが〝関登久也著『賢治随聞』〟であったというのである。しかもこれに続けて森は、
多くの賢治研究者諸氏は、前二著によって引例することを避けて本書によっていただきたい。
という懇願まで述べているのだが、なんとも奇妙なことだ。関登久也に対してあまりにも失礼であり不遜な謂(いい)だ。そしてこの懇願を受けたかの如くに、『新校本年譜』はまさに「本書によって」(これは初出でも一次情報でもないというのにも拘らずである)いることが、先の〝*65〟の註釈、 関『随聞』二一五頁の記述をもとに校本全集年譜で要約したものと見られる。ただし、「昭和二年十一月ころ」とされている年次を、大正一五年のことと改めることになっている。
から示唆されるからだ。これでは、中には「示し合わせているのではないか」と訝る人だったいるのではなかろうか、ということを私は危惧する。では次回は、この「あとがき」で挙げている関の「三冊」を、出版年を遡って澤里武治の証言に注目しながら少し調べてみた。
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ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているという。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。
おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
一方で、私は自分の研究結果には多少自信がないわけでもない。それは、石井洋二郎氏が鳴らす、
あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること
という警鐘、つまり研究の基本を常に心掛けているつもりだからである。そしてまたそれは自恃ともなっている。そして実際、従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと言われそうな私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、なおさらにである。
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そのようなことも訴えたいと願って著したのが『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))
であり、その目次は下掲のとおりである。
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〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守 ☎ 0198-24-9813
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