みちのくの山野草

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〈悪女・高瀬露〉は喫緊の人権問題だ

2021-11-23 18:00:00 | 「賢治年譜」等に異議あり
《『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版)の表紙》

 さて、前回私は
 先の㈠~㈦等についてはさらに自信を持ったのだが、……投稿者略……㈠~㈥等の評価がどう定まるかは歴史の判断に委ね、俟っていようと思っていた。
と述べたのだが、なぜ〝㈦〟は抜け落ちているのか。それは、巷間流布している〈高瀬露悪女伝説〉がもし捏造されたものであったとするならば、この件だけは歴史の判断に委ねていていいとは言えない。それは人権に関わる重大な問題であり、先の㈠~㈥等とは根本的に違い、喫緊の課題となるからである。時代はかつてとは様変わりしてしまって、今の時代は何よりも人権が重視される時代だからである。

 そこで私はこの〝㈦〟を敷衍し、〈高瀬露悪女伝説〉を検証してみたところ、この伝説は捏造されたものであることを実証できた。それゆえに、〈悪女・高瀬露〉は濡れ衣だということを世に訴えたいと願って、拙著『本統の賢治と本当の露』の〝第二章 本当の高瀬露〟でこのことを公にした。そして同書の「おわりに」において私は、おおよそ、
 〈悪女・高瀬露〉は人権問題だ。しかもかつてとは違って、人権は今の時代何にもまして優先され、尊重されるべきものだから喫緊の課題だ。したがって、私たちがこの実態を等閑視し続けていたならば、「賢治を愛し、崇敬している方々であるはずなのに、人権に対する認識があまりにも欠如しているのではないですか」と、私たち一般読者までもが世間から揶揄や指弾をされかねない。
 一方で露本人はといえば、
 彼女は生涯一言の弁解もしなかった。この問題について口が重く、事実でないことが語り継がれている、とはっきり言ったほか、多くを語らなかった。『図説宮沢賢治』(上田哲、関山房兵、大矢邦宣、池野正樹共著、河出書房新社)93p~〉
というではないか。あまりにも見事でストイックな生き方だったと言うしかない。がしかし、私たちはこのことに甘え続けていてはいけない。それは、あるクリスチャンの方が、「敬虔なクリスチャンであればあるほど弁解をしないものなのです」ということを私に教えてくれたからだ。ならば尚のこと、理不尽にも着せられた露の濡れ衣を私は一刻も早く晴らしてやりたいし、そのことはもちろん多くの方々も願うところであろう。
 まして、少なくともある一定期間賢治とはオープンでとてもよい関係にあり、しかも血縁以外の女性の中で最も賢治が世話になったのが露であるから、結果的に賢治は「恩を仇で返した」と歴史から裁かれかねない。そこで私は、露の名誉回復のためであることはもちろんだが、賢治のためにも、今後も焦らず慌てずしかし諦めずに露の濡れ衣をいくらかでも晴らすために地道に努力し続けてゆきたい。
というような決意を述べた。

 すると、この『本統の賢治と本当の露』の出版もあったりしたからであろうか、森義真氏が行った講演『賢治をめぐる女性たち―高瀬露について―』(令和2年3月20日、矢巾町国民保養センター)において、同氏から、
 そうしたところに、上田さんが発表した。しかし、世間・世の中ではやっぱり〈悪女〉説がすぐ覆るわけではなくて、今でもまだそういう〈悪女〉伝説を信じている人が多くいるんじゃないのかなと。しかしそこにまた石を投げて〈悪女〉ではないと波紋を広げようとしているのが鈴木守さんで、この『宮澤賢治と高瀬露』という冊子と、『本統の賢治と本当の露』という本を読んでいただければ、鈴木さんの主張もはっきりと〈悪女〉ではないということです。はっきり申し上げてそうです。
      ……投稿者略……
 時間がまいりましたので結論を言います。冒頭に申し上げましたように、「高瀬露=〈悪女〉」というこれは本当に濡れ衣だと私は言いたい。それについては上田哲さんがまず問題提起をし、それを踏まえて鈴木守さんが主張している。それに私は大いに賛同します、ということです。
             〈『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(露草協会編、ツーワンライフ出版)8p~〉
と仰っていただいた。
 これでやっと、恩師岩田純蔵教授からのミッションに対してはほぼ果し終えることができたかなと、私は胸をなで下ろしたのだった。それは、ここまで為し終えることができたので、〈悪女・高瀬露〉は濡れ衣であったということは今後次第に世間から受け容れられてゆくだろうから、以前に取り上げた〝㈠~㈥〟等と同様に、〝㈦〟についても今後は歴史に委ね、焦らずに俟っていればいいのだと自分自身に言い聞かせることができたからである。……私はある時点まではこのように考えていた。

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《ご案内》
 来る12月16日付で、新刊『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))を発売予定です。
【目次】

【序章 門外漢で非専門家ですが】

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