みちのくの山野草

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農本主義者 岡本利吉

2020-10-07 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『近代山形の民衆と文学』(大滝十二郎著、未来社)〉

 さて、『近代山形の民衆と文学』(大滝十二郎著、未来社)により、岡本利吉という農本主義者を知った。いままでは、農本主義者としては橘孝三郎とか加藤完治そして石川理紀之助らの名へ知っていたのだが、岡本利吉もそうだったとは知らなかった。ちなみの、手許にあった宇野豊の『農本主義のすすめ』を見てみると、「表1 昔の主な農本主義者たち」には、
石川三四郎
犬田 卯
江渡狄嶺
岡本利吉
加藤一夫
加藤完治
木村荘太
権堂成卿
白山秀雄
橘孝三郎
長野 朗
松田喜一
山崎延吉
横田英夫
             〈『農本主義のすすめ』(宇根 豊著、筑摩書房)43p〉
の名前が挙げられていて、その中にたしかに岡本利吉の名前もあったので、私は成る程と納得した。さらには、
   そうか、石川三四郎犬田 卯も農本主義だったのか。
とびっくりした。さらにもっと大事なことは、
   な~んだ、松田甚次郎の名は「昔の主な農本主義者」の中にはないではないか。
ということだった。つまり、
   甚次郎は名だたる「農本主義者」の一人だった、とは言えなさそうだ。
ということだ。

 話を戻そう。『近代山形の民衆と文学』は岡本利吉について、こう続けていた。
 岡本の思想は、〝純美<*1>〟なる思想に基づく農を基本とした〝協働<*2>〟の人類的理想社会の実現であった。彼ら<*3>は、反共産主義・反資本主義・反ファシズムをスローガンにかかげた。
             〈『近代山形の民衆と文学』(大滝十二太郎著、未来社)136p〉
たしかに、「反共産主義・反資本主義・反ファシズムをスローガンにかかげた」ということであれば、農本主義者であったと言えるだろう。
 一方、岡本は1885年(明治18年)12月25日生まれ、甚次郎は1909年(明治42年)3月3日生まれということだから、岡本は24も年上ということになる。その岡本が「松田さんと私は浅い関係ではありませんでした」 と言っているし、この「農を基本とした〝協働〟の人類的理想社会の実現であった」記述からは、あの「最上共働村塾」の〝共働〟はこの〝協働〟から強い影響を受けていたとも考えられそうだ。

<*1:註> 人間には美しい自然をみれば、だれもがそれを美と感ずる共通の、普遍的意識がある。〈『近代山形の民衆と文学』(大滝十二太郎著、未来社)136p〉
<*2:註> 人間和して平等共に働く。〈同〉
<*3:註> 星川清躬、地主不二夫、五十嵐昇、結城健三、和田光利、工藤恒治のこと。〈同〉

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2 コメント

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高瀬露のこと書きました。 (田下啓子)
2020-10-07 12:55:15
鈴木様
本をありがとうございました。
一気によみました。
これで露さんも報われますね。

そして今日そのことをブログにかきましたので、
ご覧いただければ幸いです。

https://hashira.exblog.jp/240617415/
返信する
コメントありがとうございます (田下様へ)
2020-10-07 16:56:17
田下 啓子 様
 私達の本をご高覧いただき、しかも貴ブログに投稿していただき、さらには、本の紹介までしていただきありがとうございます。
 続きは、後ほどメールにて御報告させて頂きます。
                   鈴木 守
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