みちのくの山野草

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「稲の肥料(こやし)」

2021-01-26 20:00:00 | 甚次郎と賢治
《『日本の米』(永井威三郎著、大日本雄弁会講談社、昭和18年)》

 ここのところ〝賢治の「稲作と石灰」〟シリーズを投稿しているのだが、如何に自分が当時の「稲作と肥料」のことを知らないかということを思い知らされる。なおかつ、肥料のことは私には難しい。
 そこで何かいい図書がないだろうかと思って探し廻っていたならば、『日本の米』(永井威三郎著、大日本雄弁会講談社、昭和18年)が見つかった。これは、「小國民向きの図書」シリーズのうちの一冊であり、これならば「子ども向け」のようなので、私にも解りやすそうだ。
 まず通読してみると、特に目を引いたのが「稲の肥料(こやし)」という項であり、こんなことが書いてあった。
 稲をよく育てて、たくさんのお米をとらうとするには、肥料をよくやるのが、一番ききめあることです。人間でも、よいたべ物を十分にたべなければ、よく育たないのと同じことです。
 肥料には、いろいろのものがあります。しかし、成分でこれを分けて、三つの成分が、どれだけあるか、また成分でいくら、稲にやるかをおぼえておくことが大切です。
 三つの成分といふのは、窒素と、燐酸と、加里です。この三つの成分を含んだ肥料を、よい分量だけ、まぜ合わせて、植ゑるまへと、植ゑてからと、わけてやります。
 はじめに、もとごえ(元肥)としてやるのが、大部分です。あとからやるのは、少しでよろしい。はじめに全部やつてしまふ場合もあります。たとへば、北海道のやうに、稲の育つ間の短い地方では、だいたい、はじめに全部やります。東北地方でも、大部分はじめにやります。
 肥料の中には、すぐきく肥料と、土に入れてから、だんだんにきいてくるものとあります。あとからやる肥料は、すぐきくものがよろしい。だんだんきいてくるやうな肥料は、はじめに入れておくべきです。
 つみごえ(堆肥)や豆かすなどは、だんだんにきく方の肥料です。しもごえ(下肥)や硫酸アンモニアといふ白い塩のやうに見える化学肥料などは、すぐきく方の肥料です。
 硫酸アンモニアは、日本でたくさん製造されますから、これが、おもにつかはれてゐます。
 硫酸アンモニアはは、普通硫安といはてゐますが、窒素をふくんだ肥料です。稲のでき、ふできは、おもに、窒素の肥料の十分、不十分できまります。つまり、土には窒素がたりないのです。
             〈『日本の米』(永井威三郎著、大日本雄弁会講談社、昭和18年)150p~〉
 いままでは、ぼんやりと覚えていたことや、知らなかったことなどがこれで幾らか明らかにできた。なお、この本『日本の米』は昭和18年の発行だから、その当時は戦時下であり多くの農家は金銭的に金肥を買う余裕などなかったはずだし、お金が仮にあたとしても、肥料は配給制だったから、金肥の「窒素、燐酸、加里」の入手は容易でなかったはずだ。あるいは、それこそ安くていいことずくめだと賢治が謳った炭カルの利用も考えられるが、そのことについての記述は今までのところこの本の中には見つからない。そのうち見つかるのだろうか。

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            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11
                          鈴木守
                     0198-24-9813      
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