みちのくの山野草

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大正15年4月1日付『岩手日報』によれば(検証3)

2018-10-16 10:00:00 | 「羅須地人協会時代」検証
 では今回は、大正15年4月1日付『岩手日報』の記事によって、先の仮説「賢治は百姓<*1>になるつもりは元々なかった」の検証をしてみたい。

 さてその記事だが、それは以下のような内容である。
   新しい農村の建設に努力する
         花巻農學校を辞した宮澤先生
 花巻川口町宮澤政治(ママ)郎氏長男賢治(二八(ママ))氏は今囘縣立花巻農学校の教諭を辞職し花巻川口町下根子に同志二十餘名と新しき農村の建設に努力することになつたきのふ宮澤氏を訪ねると

現代の農村はたしかに経済的にも種々行きつまつてゐるやうに考へられます、そこで少し東京と仙台の大學あたりで自分の不足であった『農村経済』について少し研究したいと思ってゐます そして半年ぐらゐはこの花巻で耕作にも従事し生活即ち藝術の生がいを送りたいものです、そこで幻燈會の如きはまい週のやうに開さいするし、レコードコンサートも月一囘位もよほしたいとおもつてゐます幸同志の方が二十名ばかりありますので自分がひたいにあせした努力でつくりあげた農作ぶつの物々交換をおこないしづかな生活をつづけて行く考えです

と語つてゐた、氏は盛中卒業後盛岡高等農林學校に入学し同校を優等で卒業したまじめな人格者である
              <『岩手日報』(大正15年4月1日付)の三面より>
 以前であれば、記者の質問に答えたのであろう賢治のこの回答に私はどうも違和感を感じて腑に落ちなかった。ところが前掲の仮説を定立した今は、逆にこの回答はこの仮説を裏付けているということに気付き、なるほどと納得する。

 それはこの回答において、「賢治が百姓になるつもりだ」という決意を直接示唆する言及を私には見つけられないからである。たしかに、それらしい言及「半年ぐらゐはこの花巻で耕作にも従事し」はあるものの、到底それだけでは当時の「百姓<*1>になる」ことには程遠い。また、「自分がひたいにあせした努力でつくりあげた農作ぶつ」とは、賢治が「ひたいにあせした努力でつくりあげた」ということではなくて、「同志二十名ばかり」がそのようにして「つくりあげた農作ぶつ」のことだと解釈できるからである。

 結局、大正15年4月1日付『岩手日報』のこの記事の内容も、先の仮説「賢治は百姓<*1>になるつもりは元々なかった」の妥当性を傍証してくれる。

 なお、賢治の花巻農学校の辞め方が不自然であったことを私は既に知ってしまっていたからなおさらに、この記事における賢治の回答には「賢治は百姓になるつもりは元々なかった」ということを読み取ってしまう。このことについては、次回もう少し詳しく論じてみたい。

<*1:投稿者註> ここでいう「百姓」とは、賢治が下根子桜に住んでいた当時の人たちが日常的に使っていた意味での「百姓」のことであり、端的に言えば、当時農家の6割前後を占めていた「自小作+小作」農家の農民のことである。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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