何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

タリウム事件を阻止できたか

2005-11-06 11:21:01 | くすり雑感
18歳未満に売れないタリウム、少女の知識豊富で信用 (読売新聞) - goo ニュース

 18歳未満の女子高生に売ったのだから、毒物及び劇物取締法15条違反であり、そこは何と言われても仕方のない薬剤師ではあるが、もし自分の薬局にそのような化学知識の豊富の若者がやってきて、化学の実験に使うという理由で聞きなれない劇物の販売を求められたら、どうだったか ということ。

-----ここから一部転載
取り寄せたタリウムを渡す際も、薬剤師は「気をつけて使ってください」と注意を促しただけだった。

タリウムなど劇物を購入するには、「毒物及び劇物譲受書」に購入する者の名前、職業、住所の記入が求められている。同法は爆発性や引火性が強い劇物を除くと身分証明書の提示は義務づけていない。

タリウムや猛毒のシアン、トルエンなどについては、受け渡し時に必ず身元を確認するよう行政側は指導している。
-----転載ここまで


 何に使うの?
 学校で化学の実験に使うんですぅ・・・
 化学の実験って、どういう実験なの?
 そんなことまで答えなきゃ売ってもらえないんですかぁ?
 この物質はね、日常使うようなものじゃないから、もう少し詳しく教えてくれるかな、そこを確認できれば販売ができるんだ

 これは架空の会話であるが、たとえばこんなような会話がとっさにできるか・・・というと、難しいような気がする。途中でキッと睨まれたら、たじろいでしまうかもしれない。そこを毅然とした態度で乗り越えられるかどうか。

 事件に関係した薬局のおじさん薬剤師を、アホな奴だなぁ、と切り捨てるのは簡単だ。しかし、それはあまりにも他人事だし、同じ薬剤師として仲間を単純に一刀両断してしまうのは、いただけない。せめて、この事例から少しでも学ぶところを吸収すべきだと思う。

 今後、同様のことが現実にあれば、少しでも水際で防ぐか、化学に携わる者は、化学の知識だけじゃ社会の中で存在しているのではないことを、教えるチャンスに変える・・・、できるものならそうしたい。ネット社会だから、この事件のことを知って、俺も・・・と考える者がいたって、不思議じゃない。

 キレイ事を言っているのかもしれない。個人情報保護に敏感になる向きもあるが、地域の薬局内で、重要な出来事として、この若者とのやりとりを共有しあうのも手だろう。おそらく、自分ならそこまでできたかというと、たぶんできなかった。自信はない。

 そこまでするのか? そんなことまで(情報を)流しちゃっていいのか? いきすぎじゃないか?

 といった、地域内の同業者からの冷たい視線を、感じないわけにはいかない。針の筵に自らを置くようなものだ。結果論で、それが功を奏するのなら、いいが。自分以外、誰も自分を守ってくれないときの、そこにどこまで立ち向かえるかどうか。

 事件は、すべての薬剤師にそれを問いかけているのではないだろうか。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする