新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ユキワリイチゲ:雪割一華(雪を割って咲く)

2006-03-16 07:06:41 | 植物観察1日1題
春の雪が舞った寒い日、篠山郊外の小さい社の境内に、小さい花が寒風にかすかに身を震わせていました。夜来積んだ白雪は、雪割りの文字の通りこの花におあつらえ向きの舞台装置です。
ユキワリイチゲ:雪割一華(キンポウゲ科アネモネ属)は、山裾の林下などに群がって生える多年草で、晩秋に新葉を出して冬越しするので、雪の中にすでに芽を出していることから“雪割り”の名があります。
早春、花茎の中ほどに大型の苞葉を3枚輪生し、2回羽状裂します。葉より高く10cm位の花茎を立て頂に1花をつけます。花弁と見えるのは15個くらいの萼片です。
葉の裏や花弁が紫色を呈するのでルリイチゲの別名があります。
アネモネ属の多くは陽があたると開花します。この日のユキワリイチゲは、冬空のもと、ときどきわずかにこぼれる日の光を感じたのか、少しだけ花びらの先を開いていました。雪中の健気なその姿は、全開の花よりずっと美しく見えている気がしました。

セツブンソウ:節分草(短い春に生きる)

2006-03-15 07:02:32 | 植物観察1日1題
3月13日、仲間と丹波篠山へセツブンソウを見に行きました。
寒の戻り、それも猛烈な寒波襲来で、3月半ばというのに現地は雪化粧でした。
春、寒さをしのいで芽を出し、節分のころに咲くというのでこの名があるセツブンソウ:節分草(キンポウゲ科セツブンソウ属)は、山地の木陰などに生える多年草で、多くは石灰岩地に群生します。
葉は5角形の各片に中央部が深く切れ込んだ形で各裂片は羽状化し、花の下には切れ込みのある輪状の総苞葉があり、上に1花をつけます。
直径2cmほどの花は、5枚の白い花弁と見えるのは萼片で縦しわがあります。花弁は退化して黄色の蜜腺になっており、薄紫色の葯はこの花弁(蜜腺)より長くなっています。中心の紫と黄色が白い花弁によく似合っています。
この場所は、春早く咲き出して初夏には消えてしまうスプリングエフェメラル(春の儚い命)といわれる草花が何種類かひとところにかたまって自生する珍しいところです。明日以降も順次“春の儚い命”たちをご紹介することにしましょう。

クロッカス(花壇に春を呼ぶ)

2006-03-14 06:53:11 | 植物観察1日1題
ようやく暖かくなった春の陽を受けて庭の片隅でクロッカス(アヤメ科サフラン属)の花が開きました。中部ヨーロッパ地中海沿岸が原産地で、明治初めに渡来し、学名のCrocus vernusのvernusは春に咲くを意味し、ハルサフラン、ハナサフランなどの別名もある、花壇に春を告げる球根植物です。
球茎は扁平で直径2.5cmくらい、網状の外皮を被ります。線形の葉には中央に白い線があります。背が低く、地際で花を咲かせます。茎のような部分は葉や花弁の基部が薄膜状の葉鞘に包まれたもので本当の茎ではありません。
2~4月に咲く花の、花弁は6枚、長さ2,5~3cm、幅7~16mmで、花糸は淡黄、花柱は鮮橙色で3烈、花色は黄、紫、青、白などで、開閉は温度の上下によります。

ハルニレ:春楡(楡の木陰はどちら?)

2006-03-13 06:59:56 | 植物観察1日1題
万博公園を歩いていると、なにやら枝の先が膨らんでいる木がありました。若芽かと近づいて見ると、ハルニレ:春楡(ニレ科ニレ属)の花がほころびかけているのでした。
ハルニレは日本各地で生育しますが、暖地では若木のうちの虫害などの被害が多く、概して北の地方に多く見かける木です。
秋に花が咲くアキニレ(11月30日記事)にたいし、春葉に先駆けて開花するのでこの名があり、普通ニレと呼ぶときはこのハルニレを指すことが多く、エルムの名でも親しまれています。
10個ぐらい束なって咲く花は紅紫色の雄蕊が目立ちます。写真の花は咲きはじめですが、満開時でもあまり目立たず、枯れ木のように見えます。
アキニレの記事でもすこし触れましたが、船木一夫の「高校三年生」のニレの木陰とは、ハルかアキか論争は“僕ら、離れ離れになろうとも…”とありますので、卒業を控えたこの時期に花をつけるハルニレと見るほうに軍配が上がりそうです。

オウシュクバイ:鶯宿梅(平安のみやび)

2006-03-12 07:22:39 | 植物観察1日1題
遅かった大阪城の梅も、ようやくほとんど満開になっています。
95種、1255本というこの梅園のなかに、上品な薄紅でいわくありげな名前の花をみつけました。鶯宿梅といわれる品種です。
天暦年間、村上天皇の御時、清涼殿の梅が枯れたので、代わりの木を探すように仰せが出でます。
西の京のさる邸に、色濃く美しい木を見つけ、これを召し上げますと、その梅になにやら結わえ付けられています。開いて見ると“勅なればいともかしこし鶯の宿はととはばいかが答へむ”
と女性の筆跡。驚いて調べさせると、歌の主は紀内侍といって、紀貫之の娘でした。
女性の心根を察してこの梅を返し、これよりのちこの木は鶯宿梅と名づけられ、内侍も紅梅の内侍と呼ばれるようなった、といった話が「大鏡昔物語」にあるそうです。
紀貫之の屋敷跡に開創された京都相国寺塔中の林光院の庭にこの鶯宿梅の子孫がいまも植わっているといいます。
大鏡では、“色濃く咲きたる様体美しきが…”ありますが、今見る鶯宿梅は、とても色濃くとはいえません。おそらく後代、品種改良した新種に、この故事を重ねて鶯宿梅の名をつけたのでしょう。
虚実の詮議はさておいて、こんなみやびな話を思い起こしながら梅の花を観賞するのも早春の楽しみです。


プリムラマラコイデス:西洋桜草(お徳用草花)

2006-03-11 07:01:53 | 植物観察1日1題
ウランターの中で西洋桜草:プリムラマラコイデス(サクラソウ科サクラソウ属)が花茎を立てて花をつけています。
中国原産のサクラソウの1種でヨーロッパで品種改良されたというこの花は、一度植えるとこぼれ種で毎年綺麗な花を咲かせるお徳用な花です。
先駆けて咲くという意味のプリムラは、和洋を問わず様々な改良品種で私たちを楽しませてくれます。英名の fairy primroseや和名のオトメザクラ、トキワザクラ、クリンザクラ、ケショウザクラなどいずれもこの花にふさわしい綺麗な名がついています。
葉や茎に白い粉がふき、花期は12月~4月、花は段になってつき、花色は赤、桃、白、藤や覆輪など多彩です。本来多年草ですが、暑さに弱く一年草として扱われています。
花後しばらくそのままにしておくと種をつけるので、これをあたりにばら撒いておくと、夏の終わりごろから一面に芽が出ます。しっかりした苗を抜いてプランターなどに移植しておくとあまり世話をしなくても立派に花をつけます。何年でも手軽に楽しめる徳用品種です。

イオノプシディウム(可憐なクレソン)

2006-03-10 06:55:44 | 植物観察1日1題
冬が寒かったせいか、種から蒔いて育てたパンジーとビオラはなかなか花をつけてくれません。
その代わりかどうか、パンジーの苗の間に、こぼれ種で自然に芽生えたイオノプシヂウム(アブラナ科イオノプシヂウム属)が一面に薄紫の小さい花をつけて花壇を彩ってくれています。
バイオレットクレス、ダイアモンドフラワーなどの別名もあるこの花は、オランダ原産のカラシナの仲間で、学名のionopsidium acauleはスミレに似たものという意味がありバイオレットクレスのクレスはクレッソンのことだそうです。
草丈は10cmくらいの低さの一年草で、花期は2月~3月、直径1cm足らずの小さい薄紫の花を山盛りにつけます。
この花、高温や湿気に弱いらしく、パンジーが花盛りになる4月末ころには跡形もなく消えてしまいます。そして放っておいても晩秋またたくさん芽を出す便利でお徳用な草花です。

ヤシャブシ:夜叉五倍子(痩せ地の助っ人)

2006-03-09 07:00:48 | 植物観察1日1題
建設業者の重機置き場の脇にヤシャブシ:夜叉五倍子(カバノキ科ハンノキ属)の花芽が膨らんでいます。
崩壊地などの裸地に多いのは、この仲間は根粒菌の働きで空中の窒素を固定できるからです。
このため砂防や荒地の緑化樹としてよく植えられます。写真の木もこの木にぴったりの環境で育っていました。
日当たりのよい産地に生える落葉小高木で、高さは4~7m、花は早春、葉に先立って雄花穂は枝先に、雌花穂はその下に短枝につきます。花はハンノキ(2月10日記事)似ますが、ハンノキは雄花穂に柄があるのに対し、ヤシャブシの仲間のそれには柄がありません。
翌年まで残る果実にはタンニンを多く含み染料に(昔は鉄漿にも)使われます。このことがヌルデの虫こぶの五倍子(フシ)に似ていて、球果の凸凹を夜叉に見立てヤシャブシの名がついたといわれています。自然工作の材料としてもおなじみのこの実、夜叉とはこんな顔をしているのでしょうか。

ヤブツバキ:藪椿(春を代表する花木)

2006-03-08 07:04:53 | 植物観察1日1題
ヤブツバキ:藪椿(ツバキ科ツバキ属)が咲きはじめました。Camellia japonicaの学名のとおり、日本の春を代表する純国産の花木です。ツバキの名は厚くて艶のある葉を持つことから、艶葉木、厚葉木、強葉木が転じたともいわれ、代表的な暖温帯照葉樹です。2~4月に咲く花は紅色で直径5~6cmの杯状。花弁の基部とこれも筒状の雄蕊の下部がくっついていて散るときは一緒に抜け落ちます。
わが国では珍しい鳥媒花で、筒状の花弁と雄蕊、鳥の好む赤い色、鳥の重さに耐える丈夫な花弁、つかまりやすい少し下向きの花、鳥の消費エネルギーに見合うタップリの蜜など取揃えて鳥を呼んでいます。
木扁に春とかく椿の字は、いわゆる日本字で、中国で椿はセンダン科のチャンチンを指します。
牧野富太郎博士は、中国ではツバキを“山茶”と書き、サザンカは”茶梅“と書くので、サザンカを”山茶花“と書くのは誤りだと変にこだわっていますが、日本では日本の書き方があってもいいのではという気がします。
科学者で名随筆家の寺田寅彦の句に“落ちざまに 虻を伏せたる 椿かな”というのがあり、一見もっともらしいが本当にそんなことが起こり得るのかと、誰かが観察したそうです。結論は、地上で転がって伏せる可能性はあっても、伏せたままで落ちることはまずないということでした。高名な自然科学者でも、一句ひねるときは、観察ではなく頭で考えるということでしょうか。


トサミズキ:土佐水木(下から見上げると)

2006-03-07 06:49:27 | 植物観察1日1題
トサミズキ:土佐水木、土佐美豆木(マンサク科トサミズキ属)が咲き始めました。高知県の蛇紋岩地帯に自生することからこの名がついていますが、観賞用に庭園などによく植えられています。高さ2~3mの落葉低木で、花は春、葉に先立って葉腋に総状花序を垂らし、淡黄色の小花7~10個を下向きに開きます。花弁は5枚、雄蕊は花弁と同じくらいの長さで、葯は暗紫色を呈します。
朔果は9月ごろ成熟して2裂し黒色の種子をはじき出します。(2月4日記事)
ヒウガミスキに似ていますが、全体に大きく、花色はやや濃くて、花穂は長く、花穂につく花の数も多いので区別できます。
普通はこの長い花穂を横から見て観賞するのですが、暗紫色の葯が面白いので花の下から撮ってみました。

ザゼンソウ:座禅草(林泉に座禅を組む)

2006-03-06 07:00:04 | 植物観察1日1題
昨日、ポカポカ陽気にさそわれて湖西方面へドライブしました。
この季節、年毎に雪景色や野鳥を見に湖北、湖西を訪れていますが、今津町のザゼンソウは、話を聞いていたものの、あまり綺麗ではない、悪臭がするなどと聞いていたので今まで見送っていましたのを、ちょうど花時だと、途中で急に思い立って訪ねました。
今津のザゼンソウ:座禅草(サトイモ科ザゼンソウ属)は、思いがけず幹線道路のすぐ近く、まだ雪が残る林下の流れのほとりに群生していました。仏像の光背に似た黒紫色の仏炎苞のなかに黄色い花穂がちんまりとおすわりになって、名のとおり座禅を組む僧のすがたそのものです。
ミズバショウと同じ仲間ですが、開花はザゼンソウのほうが早く、春まだきころから開くようです。花に強い悪臭があるというのも、この時期少ない虫を呼び寄せるための戦略でしょう。
雪解け水にハンノキの雄花穂も散り浮いていて、この一角は早春の気配で満ちていました。
思っていたより綺麗な花、日曜日なのに程よい見物客、整理員付きなのに無料駐車場、いつの間にかこれも無料になっていた湖西道路等々この日はずいぶん得をした気持ちになり、今津で地酒を1本買って帰ったことでした。

ギョリュウバイ:御柳梅(N.Z.の国花)

2006-03-05 06:17:12 | 植物観察1日1題
最も日当たりのよい家の前の花壇にギョリュウバイ:御柳梅(フトモモ科レプトスペルマム(ネズモドキ)属)を何本か植えていたのに、いつの間にか次々と枯れてなくなってしまいました。
その木が、隣家の玄関先に鉢植えでいっぱいに花をつけています。写真に撮らせてもらって、いろいろ調べてみると、耐寒性はあるが高温と乾燥に弱いとありました。どうやら一番いい場所と思って植えたのにこの木には適地ではなかったみたいです。
ギョリュウバイはニュージーランド、タスマニア地方の原産で、二ユージーランドの国花になっているそうです。現地では別名“tea tree”とも呼ばれて葉をお茶代わりに使われるという話もあります。
写真は、春咲き矮性種で、年末から春4月ごろまで長い間花を楽しめます。
柳のように細い針状の葉が中国原産のギョリュウ(御柳)に似て、花は梅に似ているところからこの名があります。

キリ:桐(下駄になるとも尊い木)

2006-03-04 07:23:25 | 植物観察1日1題
木を伐れば早く成長するのでキリの名がついたというキリ:桐(ゴマノハグサ科キリ属)は、材が柔らかで軽く湿気を吸わず、摩滅に強いので箪笥、琴、さらには下駄などに広く使われています。
中国では桐の木に鳳凰が留まると聖帝が現れる瑞兆とされていましたし、わが国でも古くから桐は皇室の御紋章でした。豊太閤もときの帝から太閤桐といわれる桐の紋を許されているなど、桐は尊ばれる木なのです。枕草紙でも“異木どもと等しういうべからず いみじうこそめでたけれ”いっています。
秋、他の木に先立って大きい葉を散らすことから、“桐一葉落ちて天下の秋を知る”(淮南子)などネガチヴないわれ方もありますが、その大きい葉痕と冬芽はさすがに堂々として立派です。

ニワトコ:庭常・接骨木(春待つ花芽)

2006-03-03 06:55:41 | 植物観察1日1題
例年にない厳しい寒さが続きましたが、此処かしこに確かに春の気配が感じられます。
早春の風にニワトコ:庭常・接骨木(スイカズラ科ニワトコ属)の冬芽が膨らんでいます。
ニワトコは、本州、四国、九州、南朝鮮から中国の暖帯に分布し山野に通常見られる落葉低木で、若い芽は山菜として人気があります。
写真の若芽は花芽と葉芽が一緒に入った昆芽といわれるもので。ニワトコは春早く、さくらと同じころ芽出しと同時に淡黄白色の花を房状(散房花序)につけますが、その花芽がもうしっかりと顔を出しかけているのです。
不謹慎かもしれませんが、この芽を見ていると早くも山菜採りへの期待が膨らんできました。

イズセンリョウ:伊豆千両(センリョウとは縁遠い)

2006-03-02 06:56:42 | 植物観察1日1題
奈良春日大社の西、“ささやきの小道”で知られている木陰の道で見かけたイズセンリョウ:伊豆千両(ヤブコウジ科イズセンリョウ属)です。センリョウの名がついていますが、センリョウ(センリョウ科センリョウ属)とは縁遠い種です。
山地の木陰に生える雌雄異株の常緑小低木で、高さ葯1m、茎は分枝少なく、横に這うか斜上します。和名は伊豆神社の社林に多く生えていたところからついたそうです。
白っぽい果実は直径5mmくらいで、残存する花冠に包まれています。5月ころ葉脇に1~3cmの総状花序をだし、黄白色の筒状の花をつけます。今ちょうどこの蕾と果実が一緒に見られます。