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collaboration of Ikku and Hiroshige

2013-04-12 | bookshelf
十返舎一九作、歌川広重画『宝船桂帆柱』上・下
1827年文政十年刊行 岩戸屋板


 私にとって、夢のコラボ作。一九先輩の作に広重が画を描いた合巻。一九63歳、広重30歳の時に出版されたものです。広重は浮世絵版画はよく見ますが、版本の挿絵はあまりみかけません。有名な『東海道五拾三次』の製作にとりかかる7年前のもので、広重がまだ日の目を見ない頃の画です。
岩戸屋板の複製本。十丁×2 \6800
複製でもなかなか出回ってないので、この値段は仕方ないかと。

 一方、一九先輩は死ぬ4年前。戯作界の大御所といっても過言でないでしょう。
 売れない時代の広重は、友人の戯作者東里山人(とうりさんじん:本名細川浪次郎。山東京伝門下。広重より6歳年上)の挿絵を描いたりしていたそうですから、一九の挿絵を描いたということは、だいぶ認められてきた時期だったんだろうと思います。この1年前に『御膳浅草法』という合巻でもコラボしています。
 この2作は共に岩戸屋という地本問屋が出版しています。栄林堂岩戸屋喜三郎は、若い頃の東里山人と広重の草紙を出版しているので、彼が一九に依頼して(広重の出世のために?)作ったのかもしれません。
 内容は、当時の職人の仕事や道具の説明が、絵付きで解り易く書いてある読み物です。私がこれを買おうと決めたのは、お話でなく絵が多いのも理由の1つでした。江戸変体文字は、読むの大変ですから。これなら絵を見てるだけでも楽しいですし、当時の仕事がどんなものか勉強にもなります。何んといっても、黄表紙なので表紙(タイトルも)が正月らしくおめでたく、色彩がきれいです。作は一九でなくてもいいようなものですが、ネームバリューだったんでしょうね。
 職人は、番匠(←と書いて「だいく」と読ませています)から始まって、本屋(岩戸屋)の「めでたしめでたし」で終ります。板元の岩戸屋は薬種も営んでいて、上巻の最後に「運利香」という「守り薬」なる怪しげな薬の広告文を載せてます。一包233文と値段も明記してあります。3500円くらい?たか~い。でも、「細川起規(←夫が矢になっているので正しい表記ができない)精製」となっていて、販売所が「岩戸屋喜三郎」と書いてあるので、ひょっとして精製人の細川という人物が東里山人で、滑稽小噺なのではないか?という疑いも消えません。もし本当に売られていたら、あくどい商法ですよ。
 『宝船桂帆柱』下巻の最終頁の新刊本の告知には、東里山人作・渓斎英泉画『三日月太郎物語』全六冊というのも載ってます。

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