TheProsaicProductions

Expressing My Inspirations

Il pendolo

2011-04-12 | bookshelf
 先週からウンベルト・エーコ著『フーコーの振り子』を読んでいる。フーコーの振り子のあるパリ国立工芸院から話は始まってすぐ『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』みたいなミステリーだと解るが、ミステリーを解くというより、中世ヨーロッパ史(この本ではテンプル騎士団)を学ぶといった雰囲気である。
 中世ヨーロッパ。といえども著者はイタリア人、登場人物もイタリア人でミラノの出版社ということで、登場人物が行動している場所が私も歩いたことことがあり宿泊したこともある界隈が出てきたりすることもあって、とっつきにくさは感じられない。テンプル騎士団の存在など聞いた事もない、十字軍が何をしたのかさえ知らないが、中世欧州はいろんな騎士団がいたんだなぁ。母に話したら書棚からコナン・ドイルの『白衣の騎士団』単行本上・下巻を出された。それはこの振り子をやっつけてから読もう。
錬金術やホムンクルスの文字もチラチラでてくる怪しげな時代。日本は執権北条氏~足利氏の時代。イタリアは人文主義思潮が起こってダンテが『神曲』なんか書いてた時代だ。
 著者のエーコ氏は小説家ではなく、記号論専攻の大学教授。道理でアーサー・C・クラークのSF読んでるような文章だと思った。ちゃんと確信のある文章は読んでいて面白い。記号論的思考で謎解きすると面白いのが「東洲斎写楽」。知ってか知らぬか解らないが、そのような方法で写楽の謎に迫った本を以前読んだが、結局真実は記号論的推理から遠いところ(ほぼ無関係)にあり、現在ではそれが定説になっている。ということは、過去の謎を解き明かすのに、宗教的なもの、伝奇や日記、預言書や呪術書、紋章や絵画やレリーフその他のあらゆる象徴的な物の研究結果が、必ずしも真実に迫るものになるとは云い難い、んじゃあないかなぁ。そんな風に考えたら、小説は成り立たないんだけど。
 意外に、事実はいつも単純であっさりしてるものだから。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿