邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「関東無宿」

2005年05月19日 | ★ハードボイルドな映画
「トキ子のお父さまのお仕事はなあに?」
「とせいにんよ!と・せ・い・にん!」

学校帰りの女学生たちはセーラー服のまま彫り師の家に直行、
やくざが彫り物を入れるところを見学・・・

片腕の彫り物師、腕文(信欣三)がイイ味。
「へえ~すごいわ~」

やたら無邪気な女学生の会話が
わたしの不安を駆り立てる。
この後何かとんでもないことが起きるんじゃないか?

・・だが不安は不発のまま
伊豆組の幹部、鶴田(小林旭)の登場。

真面目がドスを挿して歩いているような鶴田だが、
ふとしたことで会った人妻(伊藤弘子)に一目惚れ。
その女こそは伝説のイカサマ賭博師、おかる八(伊藤雄之助)の女房だった!

鶴田の恋、組同士の抗争をユーモラスな味付けで描く。

だがしかし、何かがゆがんでいる。
登場人物はみなどこかがヘンだ。


スキップしながら喋る松原智恵子、
終始ハイテンションな中原早苗。
ダミ声殿山泰司の親分、サイコー。
陰気な伊藤雄之助(恐!)はいつ爆発するかとスリリング。

「刺青一代」でも運命の女を演じていた伊藤弘子、
男が命を張るほどすごい魅力!とは思えないがどうか?

芝居がかった演出は斬り込みのシーンで花開いている。
障子がばたんと倒れたその先は・・・!
まるで芝居を観客席から見ているかのような効果。

小林旭の眉毛がやけに右上がりで、
狙ったものなのかそうではないのかは定かではない。

1963年 鈴木清順監督作品  脚本 ..八木保太郎 原作 平林たい子 「地底の歌」

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「殺しの烙印」

2005年05月18日 | ★ハードボイルドな映画
「STYLE TO KILL」

音楽のような映画!
影と光、白と黒。

ジム・ジャームッシュも熱狂したという、この世界に漂うがいい。
乾いた街角に響く宍戸錠のコルトと、
女のためいきが奏でるブルースを聞くがいい・・・・

てなこと言われてその気になって・・!
普通のやくざ映画だと思ったら大間違い!♪(字余り)

やっちゃってくれます。鈴木清順!

これで日活をクビになったという、いわくつきの映画。
よくあるドンパチ映画を想像して映画館に入った観客は
多分半分過ぎないうちに、椅子を立ったと思われる・・・

♪男前の殺し屋は、香水の匂いがした・・・♪

背筋がゾクゾクするような冒頭である。

独創的なアイディア、想像を超えたカメラアングル。
すべてが新しく、驚きの連続だ。

時も、場所もとっぱらわれた、
セイジュンの宇宙が存在する。

宍戸錠という素材を
思う存分映像の中にたたきこんだ
実験的精神にあふれたモノクロ映画。
NO1の殺し屋南原宏治もカッコイイデス。

セイジュンさんは音楽のセンスも優れている。
音楽的な監督さんだとわたしは思う。

出演:宍戸錠 真理アンヌ 小川万理子 南原宏治 玉川伊佐男

1967年  鈴木清順監督作品 脚本 具流八郎  日活

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「刺青一代」

2005年05月17日 | ★ハードボイルドな映画
今年監督生活50周年を迎える鈴木清順の作品。

タイトルバックに「本物の」刺青衆の背中が立ち並ぶ。

壮観。

渡世人鉄太郎(高橋英樹)はやくざ同士のいざこざで人を刺し、
美術学校生の弟健次(花ノ本寿)もまた
その争いに巻き込まれ人を殺めてしまう。

お尋ねものになった二人は満州行きをめざすが
金をだましとられ、日本海側の堅気の土建屋にころがりこむ。

弟思いの鉄太郎、兄を親のように慕う健次。

和泉雅子が男勝りな娘役を演じていて、信じられないほど可愛い。
花ノ本寿の純粋でいちずな青年もいい。

だが平和な生活も、対立する神戸組との争いによって崩れてしまう・・

と、ここまではごく普通の仁侠映画。

だが後半、抑えに抑えていた鉄太郎の怒りが爆発するところから
突如、めくるめく清順ワールドへ突入!
一気に演出的にも美術的にも・・色彩、映像、カメラ、すべてが爆発する!

これは映像のエクスタシーだ!素晴らしい快感。

ここでのスタイリッシュなカットやアイディアは
タランティーノの映画などにも応用された。

鉄太郎の刺青もまたわれわれの前にさらけ出される。
すべてが終わってふらふらと彷徨う場面は壮絶な美しさだ。


出演:高橋英樹 花ノ本寿 山内明 伊藤弘子 和泉雅子 松尾嘉代 小松方正など

1965年  鈴木清順監督作品  脚本 直居欽哉 服部佳 日活

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「緋牡丹博徒・お竜参上」

2005年05月14日 | ★ハードボイルドな映画
緋牡丹シリーズの大ヒット6作目。

昨日の『女と三悪人』に続くように雑踏の場面から始まった。

時代は変わって明治の中頃、浅草六区。
やはり人が集まる所には悪党やスリがつきもの。

鉄砲久親分(嵐寛寿郎)の一家にわらじをぬいだお竜さん(藤純子)が、
浅草のシマをのっとろうとするあくどい鮫州政(安部徹) 一家に挑む。

今回の助っ人は流れ者の
青山常次郎(菅原文太)、
あっと驚く登場の熊坂虎吉(若山富三郎)。

青山常次郎(菅原文太)の生真面目な「です、ます」口調に答える
お竜さんの熊本弁がよかです。

名場面として映画史上に残る雪の今渡橋での別れ。

手作りの弁当を渡した時、雪の上にころころところがる蜜柑。
渡世人同士の情愛が切なく表現される。

『娘ざかりを渡世にかけて・・・はった体に緋牡丹燃える』

鮫州政一家に乗り込む時、絶妙なタイミングで流れる
「緋牡丹博徒」も、決して上手くはないけどよかです。

ドスを片手にきっと睨む目がぞくっとする美しさ。
凄艶な美が頂点に達する、ラストの壮絶な立ちまわり。

「死んでもらいますばい!」

女の優しさと渡世人として生きる厳しさが同居する
緋牡丹のお竜さんは重要無形文化財です。

多彩な登場人物のエピソードも手際よくまとめられ、
濃厚な仕上がり。

ちょうど先週末、浅草に行ったところ。
通りの喧騒は今も昔も変わらず、六区は人であふれていた。

1970年 監督・加藤泰 脚本:鈴木則文 加藤泰

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「女と三悪人」

2005年05月13日 | ★ぐっとくる時代劇
井上梅次の脚本がいい!
江戸時代版「天井桟敷の人々」。

「知らざあ言って聞かせやしょう・・」

歌舞伎の「弁天小僧」、「娘道成寺」を贅沢にからめて、
山本富士子をめぐるはぐれもの三人・滝運和尚 (勝新太郎)・鶴木勘十郎(大木実)
・芳之助(市川雷蔵)の恋の鞘当て、奇妙な友情を描く。

三悪人というところから黙阿弥の「三人吉三」も思い出してしまう。
(なまぐさ坊主もいるし)

江戸時代も末の頃。
相次ぐ貨幣制度の変化で世間は混乱。
庶民の暮らしは悪くなるばかり。

泥棒横丁と呼ばれる両国界隈。
昼も夜も人の波がひかない。

隅田川の川べり、芝居小屋、
にぎわう江戸の町などの美術も素晴らしい。

芝居小屋の師匠・喜久之助 に山本富士子。
モテモテ。ちょっと歩けば知り合いに出会う。
パトロンが囁く。
「お前の知り人はロクな奴はいないな」
「育ちが泥沼ですもの。でもアタシは泥沼が大好き。
泥が骨まで染み付いてんでしょうねぇ」

名台詞の目白押し。

「医者は無用。呼ぶなら坊主にせい」

あきらめていた夢を再び追い求めようとする二人。
娘道成寺の踊りで雷蔵を想う女心をシンクロさせるところもニクイ演出。

雷蔵の女形の芝居、山本富士子の男役も
見られる欲張りな映画。
大木実+井上梅次といえば、
あの大傑作トンデモ映画「黒蜥蜴」があった!

雑踏で始まり雑踏で終わる。
時代の閉塞感は現代にも似ている。

1962年 井上梅次監督作品  脚本 井上梅次 大映

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