邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「鬼火」

2005年05月11日 | ★人生色々な映画
加東大介はガス会社の集金人。
いい年だが独身で、毎日汗まみれで集金に回っている。
部屋代も満足に払っていない貧乏人だ。

だがもっとひどい生活をしている人間もいた。

町のはずれの廃屋のような家に入っていくと、
そこには粗末な着物をまとった女(津島恵子)がいた。
部屋の奥にはせんべい布団に寝たきりの夫が横たわっていた。
女は「どうかガスを止めないで下さい。
夫の薬を煎じるのに必要なのです。」と懇願する。
その様子を見ているうちに加東大介は・・・

46分の短編なのだけど、強烈な印象。
哀れな女の姿が心に焼きつく。
「出かける際に締める帯すらも無い・・」と嘆く妻に、
病床の夫は自分の兵児帯を解いて渡す。
「夜ならこれでごまかせるだろう・・」

ふと現れた加東によってえぐりだされる不幸。
彼の目に映った鬼火とは・・

伊福部昭の音楽がやけに耳に響き、異様な効果をあげている。
昔から個性的な音楽を作っていたのがわかる。

加東大介の達者な演技、中村伸郎らの
味のある脇の芝居が見られる。

凝縮された旨みがある秀作。

原作は吉屋信子です。
監督の千葉泰樹は森繁久弥の「へそくり社長」などの喜劇、
華やかな女性映画など数々のヒット作を飛ばした。
文芸作品の映画化も数多い。
加東とのコンビでは「大番」という傑作がある。

出演:津島恵子 加東大介 中田康子 宮口精二 中村伸郎
1956年  監督:千葉泰樹  脚本. 菊島隆三

■人気ブログランキング