邦画ブラボー

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「山椒大夫」

2006年08月29日 | ★人生色々な映画
私にとって「山椒大夫」は
思い出深い特別な作品なのです。

と、いっても溝口作品ではなく
アニメの「安寿と厨子王丸」なんですが。

今では思い切り振り絞っても、
ドライアイな私ですが幼少の頃
これ見て泣いたことを正直に告白します。

私の「初泣き映画」だったのです。

アニメといっても
声優として
安寿が佐久間良子、厨子王が北大路欣也、母が山田五十鈴・・
山椒太夫:東野英治郎、他に三島雅夫、山村聡など、
とんでもなく豪華なメンバーが名を連ねている作品で、
今も安寿が鳥に姿を変えて飛んでいく美しい場面を
まざまざと思い浮かべることが出来ます。


追憶・・・・
追憶・・・

言うことをきかない子供への脅し文句として
「人買いにさらわれるぞ!」
「わがままばっかり言ってると、サーカスに売るぞ!」という
言葉が生きていた時代ですね。
(私の周辺だけ?)




溝口作品を忘れるところでした。

平安時代、身分の高い役人だった
平正氏(清水将夫)は農民を救うためにお上にたてつき
左遷される。
家を追われた母(田中絹代)と子、
召使(浪花千栄子)は盗賊が
横行する山道で野宿していた。

人買いに騙され、
母と引き離された幼い兄妹は
残忍な山椒大夫(進藤英太郎)の元に買われていく。

貧しい民を救えという父親の思想は、
お守りに渡された観音像と共に厨子王に受け継がれるが、
その運命は過酷を極めた。

山椒大夫の舘の様子、
佐渡に売られていった母親の身の上などが
これでもかと容赦なく描写される。

数年が経ち、
苛烈な境遇に人が変わったようになった厨子王。
あの美少年津川雅彦の面影は何処に
劣悪な環境はこれほどまでに
人間を変えてしまうのか!と暗澹たる気持ちになる。

ただひとつの救いは安寿(香川京子)の清らかさのみだ。

今日BS2で放送された
「時空を越える 溝口健二」によると、
少年時代の厨子王を演じた津川雅彦は当時14歳だったそうだが、
相当厳しい撮影だったそうで
助監督の田中徳三が手加減して小道具を細工してくれようとしたのに
溝口監督にどやされ、ひっくり返るくらい重たい薪を背負わされたとか、
母と引き離された湖の撮影はなんと、2月の厳冬期だったと
語っていた。

田中絹代は「顔に艶があるから肉を食べないでください」と言われたとか。

実際そのシーンを見ると
素晴らしく現実感がある演技になっているので
誰もぐうの音も出なかったことであろう。

色んなエピソードを聞いても聞かなくても
後世にまで語り継がれる作品であることには変わりない。

津川雅彦が成人したら花柳喜章 になり
イメージとはだいぶ違ってかっくんときたが、その熱演は胸に迫る。

田中絹代の圧倒的な存在感と、神がかった演技で
ラストでは性懲りもなく泣きそうになってしまった。
宮川一夫のカメラもまた、神ですが。

*映画の中のイイおんな*
香川京子:汚れの無い美しさと申しますか、
ボロを着ていても生まれのよさが零れ落ちてしまう、
品のいい安寿です。私はこの方の「鼻」、端正な鼻筋が好きです。

1954年 溝口健二 監督作品
原作 森鴎外
脚色八尋不二 依田義賢
撮影 宮川一夫 音楽 早坂文雄 美術 伊藤熹朔

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