邦画ブラボー

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「怪猫有馬御殿」

2006年08月17日 | ★恐怖!な映画
火の見やぐらの上で
女の首吊り死体が見つかる。
手の指は一本ちぎれていた。
その目がばっちり開いて・・・ぎゃ~!。

魅力的なつかみで気分が高まる。

大奥でいじめ殺された女が猫の手を借りて凄絶な復讐を遂げる、
正統派
因果応報化け猫映画です。

嫉妬深い、おこよの方一派に、
心優しいおたきの方(入江たか子)は
連日陰惨ないじめにあっていた。

今日も可愛がっていた猫がいたずらをした
かどでつるしあげられ、
「八百屋の娘風情が・・」
「猫を死骸にしやれ!」
「帯をときゃれ!」「裸踊りが所望じゃ!」
などとストレートで壮絶な辱めに合う。

殿様が寵愛すればするほど、
いじめはエスカレートする一方という方程式。

丑の刻参りの濡れ衣をかけられたり、
木刀でなぐりつけられたり
さんざんいたぶられた挙句、
卑劣な手段で殺されたおたきの方の
血をぺろぺろと舐めるのは愛猫、お玉!

その夜からおたきの方は
なよなよとした虫も殺さぬお姫様から一変!
最強の化け猫と化し、復讐を始めるのだ!

入江たか子自身も
華族出身の華やかなスターだったこともあり、
その大変身ぶりが当時話題になったと聞く。
まさにドンピシャリの配役だったのですね。

化け猫の名前に「お玉」が多いのも謎だが
人や物を操る技を持っていることも謎だ。

寝込みを襲われた腰元たちが、
ポンポンポポンという鼓の音と共に意のままに操られ
長じゅばん姿でアクロバットを繰り広げさせられる有様は
怖いというか、はっきり言って笑ってしまうし、
猫ならではの身軽さをいかした
屋根の上での立ち回りは女の所作とは思えないほど豪快で胸がすく

暗いようで妙な愛らしさ明るさも漂う、それは猫だから?

いつの間にか化け猫を全面的に応援してしまうだろう観客は
ラスト、やぐらに追い込まれ
弓矢に倒れながらも
斬られた首をしゅ~~~~っと飛ばし
ピンポイントに憎い女の首筋にがぶっと
噛み付くシーンに拍手喝采を禁じえないであろう。

ここは、最高のカタルシス。
その恐ろしい面構え(メイク最高)といい、
化け猫映画の名場面といって良いと思う。

ただし「油舐め」「魚食い」はありません。念のため。ブログランキングへ

*映画の中のイイおんな*
入江たか子:高峰秀子の本によると、山田五十鈴、原節子
と共に日本三大美人女優に挙げられると言う浪漫チックな
美貌で一世を風靡した。だが一時は
病気、借金苦など苦労を重ね、ようやく復帰した作品がこの化け猫映画
だったのだ。すべてふっきった女優魂はあっぱれだ!

1953年   荒井良平 監督
脚本   木下藤吉
撮影   伊佐山三郎
音楽  高橋半
美術 上里義三
装置   梶谷輝男
美粧 日樫嘉雄