邦画ブラボー

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「小説吉田学校」

2006年08月23日 | ★人生色々な映画
『小説吉田学校』 8月25日発売 
5,040円
発売元:東宝
(C)1983 TOHO CO., LTD.

ちょうど麻生太郎氏の著書「祖父 吉田茂の流儀」を読み終えていたので
その内容と合致するところも多く、大いに楽しんで見た。
麻生さんも総裁選出馬するそうですが
作品中には犬と散歩する少年太郎君もフューチャーされている。

監督・脚本は(長坂秀佳と共同脚本)
日本沈没」(旧)、「八甲田山」の森谷司郎。
カメラは木村大作
壮麗な美術は、黒沢映画でもおなじみ村木与四郎である。

まず何より驚いたのは
吉田茂その人であるかのような森繁久彌の迫真の演技であった!

トレードマークの白足袋、
羽織袴はもちろん、葉巻をくわえたポーズ、
ダンディな洋服の着こなしがぴたりと決まっていて、
まるでドキュメンタリーを見るように自然に入っていけた。
さすがの千両役者である!

映画の前半は、
敗戦直後GHQによる占領下にある中
吉田の類まれなるリーダーシップによって
サンフランシスコ講和条約、
安保締結を成し遂げるまでの奮闘を描いている。

確固たる信念の元でアメリカをかわし
ぐいぐいと日本を引っ張っていったエネルギーが
画面から満ちあふれている。
外国と堂々とネゴシエイトする姿勢には思わず
「今こんな人こそ日本にいて欲しい!」と
誰もが思うだろう。

後半は
吉田と政敵、鳩山一郎(芦田伸介)の政界復帰と
その一派、である三木武吉(若山富三郎)との壮絶な抗争を中心に、
吉田の歴史に残る「バカヤロー解散」も含め、
ドラマよりドラマチックな人間模様を描いて
132分もあっという間。

主義主張は異なろうとも、
命を張って戦後日本を築いていこうとする
政界人のすさまじい戦いが胸を熱くさせる。
そして現代に脈々と通じている
保守本流の大きな流れが見えてくるしくみである。

個性派そろいの実在政治家を
役者がどう演じるかも大きな見所のひとつだ。

日ごろの映画耽溺のせいで、
三木(若山富三郎)と河野一郎(梅宮辰夫)が
ツーショットで出てくると、すわ「出入りか?」
盛り上がってしまうのが情けないところであるが。

吉田学校の門下、若き田中角栄に西郷輝彦
「ま、ソノォ~」は言わないまでも
極端にデフォルメした「ダミ声」の論客ぶりは必見だ。

吉田の娘和子を夏目雅子が演じ、その凛とした存在で
家庭人としての吉田の在りようを映し出している。
深い教養に裏打ちされたユーモアと、
ちょいと頑固ジジイなところも
森繁本人にダブる。

私邸がある大磯の浜辺を吉田が歩くショットが
何度かはさまれ
大波と大風を受けながら、
すこしも揺るがず立ちはだかる姿が網膜に焼きつく。
頼むぞ!と吉田は言い残す。

自民党総裁選を9月に控え、
満を持して発売されるこの作品で
今一度我々にとって戦争とはなんだったのか、
戦後の政治の歩みを振り返ってみるのもよいのではないだろうか。

若い人は
少なくともニュース、新聞がより一層興味深く見られること、請け合いです。

*映画の中のイイおんな*
夏目雅子:楚々としたたたずまいで
吉田茂のお嬢さんを演じています。きらきらした大きな瞳で見つめられると
森繁さんもタジタジ・・だったかも。
こういうきちんとした役もよくお似合いですね~

1983年 監督 .森谷司郎

脚本 長坂秀佳 森谷司郎
原作戸川猪佐武
撮影 木村大作
音楽 川村栄二
美術 村木与四郎 育野重一
照明 熊谷秀夫

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