競争原理から協力・つながり原理へ

2006年07月16日 | 持続可能な社会

 以下は、2003年に『人材教育』という雑誌に書いた小エッセイですが、ふと思い出して、この時点で改めてみなさんに読んでいただこうかなと思いました。

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 ごく最近、遅ればせながら、2002年度アカデミー賞主要4部門授賞で評判の『ビューティフル・マインド』を見ました。

 研究に打ち込むあまり精神のバランスを失い、統合失調症の幻覚に悩まされふつうの生活ができなくなった、天才数学者ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニアが、妻の愛に支えられて、やがて大学に復帰し、ついにノーベル賞を授賞するまでの47年の苦闘の、実話に基づいた物語です。

 「ゲーム理論」について多少は知っていたのですが、その土台を築いた数学者にこんなドラマがあったとは知りませんでした。

 そして、評判どおりとても感動的な物語でした。

 しかし、ここでは映画の紹介をしたいわけではありません。

 不勉強をさらけるようで恥ずかしいのですが、この映画で、「ゲーム理論」が――ノーベル賞を授けられるほど――確立され広く承認された理論であることを改めて確認したことを言いたいのです。

 主人公が友人達とバーに行くと、3人の女子学生が入ってきて、中の1人が大変な美人なので、目は彼女に集中します。

 その時、主人公はインスピレーションで、従来の競争理論に基づいて行動すると、男達は美女に集中して奪い合いをし、結果としては誰もが彼女を手に入れることができない、しかしもし「自分の利益とグループ全体の利益を同時に追求する」ことにして、競争をやめて他の2人にもアプローチしたら、みなが女子学生の誰かと付き合える(つまり全体の利益になる)、と言います。

 主人公はやがてそれを数学的に定式化し、150年間の定説であるアダム・スミスの理論――「各人が自由に自分の利益を追求することが本人の利益にも結局全体の利益にもなる」――を根底から覆したというのが、話の始まりです。

 しかし映画の話はそこまでで、私が言いたいのは、「ゲーム理論」がノーベル賞的に正しいとすると、もしかして「競争原理(理論)」が社会や会社を活性化すると思っている(ように見えます)、日本も含む先進諸国の多くのリーダーのやっていることは、とても古く(150年前)有効性を失った理論に基づいていることになるのではないか、ということです。

 数学理論そのものを論評する力はありませんが、どうもそうではないかという気がします。

 気がすると言っても、単に主観的・直感的に言っているわけではありません。

 ここ数年、現代科学の様々な分野の標準的な仮説をできるだけ統合的に学んでみた結果、近代科学から現代科学へは大きな飛躍があることに気づいたことと、その話が非常によく一致しているからなのです。

 そして、教育=人材育成、人材活性化=再教育に関わる世界でも、すでに「競争原理」(筆者の用語では「ばらばらコスモロジー」)ではなく「協力原理」(「つながりコスモロジー」)、しかもきわめてスケールの大きな規模の協力・つながり原理に移行することが、真の、長期的な、自・他の利益になる時代がはっきり来ている、と筆者は考えています。



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コメント (5)
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