今朝、ふと今年2月のIPCC第4次報告の新聞報道は読んだけれど、報告書そのものはちゃんと読んでいなかったなと思って、ネット検索をしてみました。
2月2日付けの報道発表資料がすぐに見つかりました。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4 次評価報告書第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要 速報版」
*
改めて、素人でも知ろうとさえ思えばそうとうなことを知ることができるのだな、と実感しました。
再確認したのは、まず「出席者:107か国の代表、世界気象機関(WMO)、国連環境計画(UNEP)等の国際機関等から合計306名が出席。わが国からは、経済産業省、気象庁、環境省などから計9名が出席した。」こと、「第4次評価報告書の作成には、3年の歳月と、130を超える国の450名を超える代表執筆者、800名を越える執筆協力者、そして2,500名を越える専門家の査読を経て、本年順次公開される。」ことです。
これだけ多数の国、つまり国同士の利害関係は必ずしも一致しない国々の、多数の専門家たちがあえて出した報告・警告であるというのは重要です。
主な結論の第一に、「気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断定。」とありました。
これはすでに多くの報道機関等が指摘していますが、めったなことではものごとを断定しない職業意識が身についている科学者たちがあえて「断定」したというのはまったく異例であり大変なことだと思います。
しかも「政策決定者向け」となっています。
日本も、経済産業省、気象庁、環境省などから9名が出席したということですが、「政策決定者」に正確に伝わっているのでしょうか。率直なところ、そこが疑問です。
特に重要だと思うのは――しかし、これは新聞などでも報道されていなかったように記憶しますが――「参考」の欄に、どういう政策が採られたらどういう結果になるかというシナリオがちゃんとあったことです。これは驚きでした(勉強不足、というか勉強遅れですみません)。以下、長いのですが、あえて引用しておきます。
(参 考)
SRES(排出シナリオに関する特別報告)の温室効果ガス排出シナリオ
○A1「高成長社会シナリオ」
高度経済成長が続き、世界人口が21 世紀半ばにピークに達した後に減少し、新技術や高効率化技術が急速に導入される未来社会。A1 シナリオは技術的な重点の置き方によって次の3 つのグループに分かれる。
A1FI:化石エネルギー源重視
A1T :非化石エネルギー源重視
A1B :各エネルギー源のバランスを重視
○A2「多元化社会シナリオ」
非常に多元的な世界。独立独行と地域の独自性を保持するシナリオ。出生率の低下が非常に穏やかであるため世界人口は増加を続ける。世界経済や政治はブロック化され、貿易や人・技術の移動が制限される。経済成長は低く、環境への関心も相対的に低い。
○B1「持続発展型社会シナリオ」
地域間格差が縮小した世界。A1 シナリオ同様に21 世紀半ばに世界人口がピークに達した後に減少するが、経済構造はサービス及び情報経済に向かって急速に変化し、物質志向が減少し、クリーンで省資源の技術が導入されるもの。環境の保全と経済の発展を地球規模で両立する。
○B2「地域共存型社会シナリオ」
経済、社会及び環境の持続可能性を確保するための地域的対策に重点が置かれる世界。世界人口はA2 よりも緩やかな速度で増加を続け、経済発展は中間的なレベルにとどまり、B1 とA1 の筋書きよりも緩慢だがより広範囲な技術変化が起こるもの。環境問題等は各地域で解決が図られる。
「どのシナリオでも、今後20年間に、10年当たり約0.2℃の割合で気温が上昇。」とされていますが、しかしB1のシナリオがいちばん予測値が低いこともグラフなどではっきりと示されています。
「政策決定者」が、報告書を正確に読めば、これからどのシナリオの採用を決定するよう示唆されているか、「火を見るように」明らかなのではないでしょうか。
それはともかく、民主主義の国日本では、最終的な「政策決定者」は国民であって、政府は「政策決定代行者」にすぎません。
私たち国民ひとりひとりが自分で、この報告書をちゃんと読む必要があったのだな、と感じています(まだの方はどうぞ読んでみて下さい)。
残念ながら、私の知るかぎり、どの報道機関も、IPCCがあえて「政策決定者」に向けてこの「B1持続発展型社会シナリオ」がもっとも適切な選択肢であることを示唆している(ように読める)ことに注意を促すような報道はしていなかったようです(ちゃんとやっていたのに私が知らなかっただけだったら、失礼)。
さらに不思議なことに、3月20日付けの「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4 次評価報告書第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(2007,確定訳」
**のほうを見てみると、みごとなくらい「火を見るように明らか」な印象はなくなっていました。ここには何か作為があるのでしょうか。
ともかく、現在の「政策決定代行者」が適切なシナリオを選択しないのならば、真の「政策決定者」「主権者」である国民が、適切なシナリオを選択できるような新しい「政策決定代行者」を選択しなおさなければならない、というのが
「持続可能な国づくりの会」の思いです(とメンバーの一員である私は思っています)。
7月の参院選の結果が、国民の気づきの微かな兆しであれば、と願っているところです。
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