世界的なCO2発生削減に向けて再生可能エネルギーへの切り替えが進む中で、CO2発生量の多い石炭火力発電を取り巻く環境は日々に厳しくなっていくようです。
(1)世界的に見ても欧州でも石炭火力発電所の損害保険の引き受け見直し機運が強まっているようです。9月1日付の日経新聞では「石炭火力の損保引き受け停止 欧州先行、脱炭素促す」との見出しで、下記のような報道がされています。
◆世界の保険会社が石炭火力発電所に絡む損害保険の引き受けを相次いで止める。
・独アリアンツなど欧州勢は石炭火力の売上高が一定割合を超える企業とは保険契約しないし、国内勢も発電所ごとに引き受けるか判断する。
背景としては、自然災害の頻発でリスクを分散するための再保険料が急騰していることも、選別の背景にあるが、銀行や機関投資家の生命保険だけでなく損保も産業界に脱炭素を迫っている。
・アリアンツは23年から新規に石炭採掘を計画する会社や石炭火力発電所を建設する電力会社、発電量または収益の25%以上を石炭火力に依存する電力会社などへの損害保険の提供を停止する。仏アクサも案件単位でなく企業単位での引受停止を基本としている。石炭火力だけでなくオイルサンド(石油を含んだ砂岩)事業を手がける企業の引き受けも停止した。
・日本の大手3グループも20年秋に新設の石炭火力の保険引き受けを原則停止する指針を公表した。
MS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)は今年6月、国内外の新設案件の引き受けを全面停止した。SOMPOHDは指針を海外子会社に広げる検討をしており、東京海上HDは既設発電所の新規引き受けも止めた。
◆電力会社は発電所を新設する際、事故や想定外のトラブルに備えて必ず損害保険に入りますが、「保険を使えないのは建ててはいけないのと同義」で、引受停止は新規撤退を促す効果が大きい。
日本では未着工の石炭火力発電所の新設計画は現時点でゼロのようですが、経済産業省は「環境負荷の高さに加え、保険も契約できないとなればもう新設計画は出せないだろう」(幹部)と見る。
既存の発電所への対象拡大や高効率の発電所への建て替え時の対応が今後の焦点になる。
・このような損保会社の動きは、損保会社も脱炭素への動きが鈍いと資本市場から資金を引き揚げられるリスクを抱えているからです。
現に、米保険会社AIGは6月、英運用会社リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)の投資先から外されましたが、石炭事業へのエクスポージャー(リスクの割合)や脱炭素への対応が不十分と判断されたからのようです。
・更に、SMBC日興証券の村木正雄シニアアナリストによると、「状況は単なるアピール競争の域を超えている。脱炭素の取り組みが遅れた金融機関には、脱炭素の取り組みが遅れた企業向けのハイリスクな投融資や保険ポートフォリオ(座礁資産)が集中するリスクがある」と指摘しています。
◆これらの動きのもう一つの大きな背景としては、再保険料が高騰しているという事情がある。
・再保険大手のスイス・リーによると21年上期(1~6月)の世界の自然災害に伴う損害保険額は400億㌦(約4兆4000億円)と10年ぶりの高水準になり、再保険料も上昇傾向にある。米再保険仲介大手ガイカーペンターによると世界の自然災害の再保険料は21年に17年比で17%上昇している。
・日本でも損保会社向けの風水害の再保険料は21年に前年比1割上がり、過去25年で最高値圏にある。
・スイス・リーは、3月に経済協力開発機構(OECD)諸国は30年まで、その他の地域は40年までに石炭火力の引受残高をゼロにする方針を示したため、再保険に頼れなくなるとの危機感があるからのようです。
※ 再保険:
保険会社は自己の引き受けた保険のうち、主として高額契約や、地震・災害やテロなど巨額の保険金の支払いが見込まれる保険について、リスクを分散するために国内・国外の再保険引受会社と結ぶ保険契約のことで、いわば「保険の保険」なので「再保険」といいます。
この再保険の引受会社の大手には西欧の会社が多いです。
(2)日本に於いても、8月24日に国際協力銀行(JBIC)は24日、石炭火力発電に対する事業融資については2040年度をメドにゼロにする目標を明らかにしましたが、欧州のように積極的な方針というよりは受動的な方針といえそうです。
というのは、21年3月末時点の融資残高は6605億円だが、その後新規の融資案件が途絶えており、既存融資の返済が進むことで残高が減るというものです。
尚、JBICは再生可能エネルギーのほか、排出した二酸化炭素(CO2)を地中に埋める石炭火力発電向けの新技術の普及などに力を入れる考えで、脱炭素社会への移行を後押しするとのことです。
(まさ)