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大興奮!大満足!「ワイルドソウル」by垣根涼介

2017年01月11日 | 小説レビュー
~その地に着いた時から、地獄が始まった――。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地は密林で、移民らは病で次々と命を落とした。絶望と貧困の長い放浪生活の末、身を立てた衛藤はかつての入植地に戻る。そこには仲間の幼い息子、ケイが一人残されていた。そして現代の東京。ケイと仲間たちは、政府の裏切りへの復讐計画を実行に移す! 歴史の闇を暴く傑作小説。


久しぶりに快作に出会いました!高い前評判通りの大作です!
疾走感と緊迫感、壮大なスケール、そしてクライマックスからエンディングに至るまでの爽やかな笑顔・・・。

垣根涼介さんのあとがきを読んでもわかるとおり、筆者入魂の素晴らしい作品です!

上下巻で、1000頁に及ぶ大作なんですが、読み出したら一気読みでした。
2004年に本作で、史上初となる、「大藪春彦賞」、「吉川英治文学賞」、「日本推理作家協会賞」の三冠を受賞した作品だというのも納得です。

ただのハードボイルド小説ではなく、明治末期から戦中、戦後にかけて国策として行われた「移民政策」、特に夢を抱いて南米に渡った為に、ある意味では「国家の甘言に騙された」ともいえるような、アマゾンの奥地での凄惨な人生を送ることになってしまった日系一世の話で上巻の大半が占められております。

上巻の終わりごろから、その息子世代が力をつけて、日本国家に復讐果たそうとするエキサイティングな展開に心が奮えます!


ブラジルでの辛く厳しく、暗く、ジメジメとした大変な生活から一変して、下巻の日本編では、サンバやサルサのリズムよろしく、軽快に情熱的に物語が進行します。

登場人物のキャラクターづくりも素晴らしく、性格やセリフにも味があり、感情移入してしまいます。

復讐劇の第一段階が成功したあたりで、「この作品は俺が読んだ小説の中で五指に入るかも!!」と興奮しながらページ捲りました。

これ以降はネタバレになるので詳細には触れませんが、完璧なストーリー展開と爽やかで心地良いエンディングに笑顔がこぼれます。

今まで知り得なかった、ブラジル移民の先達の凄まじい苦難の歴史を知ることが出来たことと、解説の宮沢和史氏が書いている「腑抜けとなってしまった現代の日本人に対する警鐘」、「村上龍氏の『半島を出よ』を読んで感じた気持ちを今一度、奮い立たせよ!それこそ旧きよき時代の『ワイルドソウル』である」というような文章に、再び感銘を受けました。

世界の均衡が不安定になってきている昨今、今一度、日本人として生きる誇りと偉大な先達への感謝、崇敬の念を呼び起こさなければなりません!

とても良い小説に出会えたことに感謝したい気持ちです!

★★★★★5つです!
コメント
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