~どこにも行けず部屋に閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然、鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先の世界には、似た境遇の7人が集められていた。9時から17時まで。時間厳守のその城で、胸に秘めた願いを叶えるため、7人は隠された鍵を探す―「BOOK」データベースより
辻村深月さんの作品は、『僕のメジャースプーン』以来、久しぶりに読みました。
人気作も多く、色々と読んでみたい作品があるんですが、図書館でも予約がたくさん入っていて、読めてない本がいっぱいあります。
『僕のメジャースプーン』は小学生が主人公で、舞台も小学校で、わりと現実的な物語でした。
今回の『かがみの孤城』は、主人公が中学生で、舞台は中学生を取り巻く日常と思いきや、パラレルワールド的な、もう一つの世界である「お城」との行き来が鍵となり、ファンタジー要素たっぷりです。
現実世界では、中学生の不登校の問題、いじめ、家庭不和、そして思春期の子ども達の誰もが抱えている精神的な不安定さが、主人公「安西こころ」を取り巻く環境の中で語られます。
また、パラレルワールドの「お城」では、摩訶不思議な「オオカミ少女」の存在、7人の子ども達の隠された日常が少しずつ明らかになっていく一方で、一向に謎解きの行方がわからず、期限だけが迫ってきます。
僕の中では、あまり好みではない分野で、「最後まで興味を持って読み続けられるか?」と思いきや、段々と面白みが増していき、「どんな風にオチをつけるのか?」と興味津々で、中盤から終盤にかけては加速度的に盛り上がり、最後の謎解きで一気に霧が晴れ、伏線回収も見事でありました。
物語の組み立てが巧いと思いますし、最後にはとても温かな気持ちになって本を閉じました。
前評判どおりの傑作だと思います。物語の主人公たちと同世代の小中学生が読んでも良い作品ですし、大人が読んでも楽しめる良作だと思います。
★★★★4つです。