素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

今年の一冊は?と問われたら・・・

2022年12月29日 | 日記
 何だかんだと言っても、ロシアによるウクライナ侵攻が今年の一番大きな出来事だろう。これまでにも世界各地で戦争はあったが、限られた情報しか届かなかったため、リアルに感じることができなかった。SNSが発達した今は、ウクライナの様子が瞬時に伝わってくる。live映像であるだけに戦争のもたらす惨状をダイレクトに感じることができる。「百聞は一見に如かず」の例え通りである。

 「今年の一冊は?」と問われたら迷うことなく、宗教と政治(戦争)の関係に切り込んだ「仏教の大東亜戦争」鵜飼秀徳著(文春新書)と答える。今まで先の大戦で宗教がどのように関わったのか?ということが語られることはほとんどなかったように思える。今までにもブログの中で何度か取り上げてきたが、それだけ強くこの本の内容が強く残っているのである。

 先週のNHK『サタデーウオッチ9』では、ウクライナ侵攻の特集を組んでいた。その中で、プーチン露大統領とロシア正教会キリル総主教の関係について大きく取り上げていた。
 赤木野々花アナウンサーの論調の底には、小室直樹さんが「日本人のための宗教原論」の中で指摘している《日本人は宗教を自分や周囲の人間に幸せをもたらしてくれるなにやら素晴らしいものと独り合点しているようだ。その抱いている宗教家のイメージにしても、穏やかで美しくて、普通の人間よりは遙かに道徳水準が高くて、ちょっと煙たくて嫌らしいところがあるかもしれぬが、中味は高潔な人、と捉えている。これがまあ一般的なところだろう。》を感じた。私は、この1年小室さんや橋爪さんの著書で宗教について学んだおかげでそういう幻想は消えている。また、鵜飼さんの本で、より具体的にそのことを学んだ。

 番組では、ロシア政府によって戦場に送られた兵士の精神的な拠り所としてロシア正教がバックボーンになっていることが報じられた。この観点は今までのウクライナ報道では抜けていたものである。
  

 これを見ていて、政治と宗教のこの関係は今回のプーチン露大統領とキリル総主教との特別なものではない。と思わず口走って妻や息子を驚かせてしまった。

 明治政府になって、日清、日露、日中、太平洋戦争と続く流れの中で仏教界が同じような関係であったことを鵜飼さんは資料をもとに「仏教の大東亜戦争」で丁寧に解説している。『サタデーウオッチ9』でのこの映像によって本の内容がイメージできた。

 来年も引き続き考えて行きたいと強く思った。
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