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素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

日本の良さを再発見

2010年01月10日 | 日記
 「咲くやこの花館」に咲いていたメコノプシス(ヒマラヤの青いケシ)はチベット、雲南など標高3500m以上の地に自生するケシ科の植物。冷涼地でのみ栽培可能で、いつでも開花風景を観ることができるのは世界でも珍しいことだそうだ。冷蔵庫など特殊な装置を用いて開花時期を調整しているとのこと。他にもクロユリ、コマクサなどの高山植物も同じように開花調整をして年中花を欠かさないようにしている。
 ありのままの自然を追求することと容易には行けない高山の植物を高山病の心配もなく鑑賞できるように人工的に管理することの2つが欠かせないということを話されていた。素人目には見えないが、維持管理のには高い技術力があるのだということをあらためて考えさせられた。

 その日の19:30のNHK「クローズアップ現代」で『野菜工場』をとりあげていた。

以前にも野菜工場の取り組みをTVで観たことがあったが、今回は、その進歩ぶりに驚いた。

◇野菜工場で水耕農業-20毛作も可能、無農薬
 千葉県松戸市で野菜工場「みらい」を経営するのは、嶋村茂治さん(38)である。野菜工場とは発光ダイオード(LED)照明や空調などを自動制御し、季節も場所も関係なく工場で安定的に安全な無農薬栽培による野菜づくりを成功させている工場をもつ未来企業である。ビニールハウスでトマト、イチゴなどを作ることはよく知られているが、むろんこの野菜工場はビニールハウスとは違う。現在、根菜類はまだ難しいが“葉”もの野菜ならレタス、水菜、春菊、セリなど20種類ぐらいは作成できる。2008年春には南極昭和基地に横と高さ2m、奥行き1.5mの工場をつくり隊員の野菜を補給した。また現在、定食などで有名な「大戸屋」が320円で提供している野菜サラダも「みらい」の指導と工場で作っているものだ。

 野菜工場の発想は古くからあったという。戦争直後に進駐軍としてきていたGHQがアメリカ人に日本で作った野菜から寄生虫が体内に入ると困るため、野菜工場栽培をしたというし、1970~80年代に日本のスーパーが、人寄せの手段として店内に野菜工場栽培のボックスをおき、1~2週間で成長すると売るというデモンストレーションなどを行っていた。

 しかし、本格的な野菜工場を設立するとなれば設備費や電気代がかかり、売却コストとあわないうえ、照明や水耕栽培の養液づくりが難しく品質、収穫量などが安定せず、コストにあう本格的な生産は、結局実現できていなかった。

 嶋村さんは小さいころから草花が好きで、学校が終わると毎日武蔵野の野原に行き、さまざまな草木を観察し、味見のため必ず食べたという。また花と花を飛びかうハチにも興味をもち、自分の指に毒針をささせ、毒針の袋を研究する植物、昆虫少年だった。高校生の時に植物工場を発想し、東京農業大学に入学、さらに千葉大大学院の自然科学研究所に入り博士課程まで進む。卒業後にいよいよ害虫駆除会社に入社し植物工場の研究に取り組むが、さらに農業資材メーカーに転職し着々と工場設立への基礎知識を蓄積していった。しかし、同社の業績が悪化して研究続行が難しくなったため1年で退社し、ついに2004年に自分で「みらい」を設立したという次第である。

 ◇水養液、照明調節などで効率よい作物を作成
 それまでの体験で、どの野菜にはどんな水養液を混合したらよいか、LEDの照明時間は野菜の種類によってどう違えるか--などの細かなデータ、調査研究をしていたので、水耕栽培には自信があったという。野菜工場のメリットは、(1)天候の影響を受けない、栽培に最適な環境を作れる(2)空き倉庫や廃屋工場を有効活用できる--などで、もっともすぐれている点は面積効率化を高く使えるので露地栽培の50倍を作れるし、20毛作も可能だという。それは露地栽培だと露地面積分しか栽培できないが、工場だと10段ベッドにすれば10倍になり、水耕なので野菜と野菜の間をそれほどすき間を空ける必要がなく密集度は2.5倍、さらに成長速度が露地の2倍あるので、10×2.5×2=50倍になるというのだ。「みらい」が手がけた小津産業の工場ではレタス栽培で毎日1800個を収穫、LED(照明)のあて方を細かく工夫すると不必要な根の部分、白い部分も作らずにすむので、収穫したものを開くだけでサラダ用にバラバラになるし、不用部分を作らないので切り捨てる必要もないらしい。また野菜の形、味、香りも変えることができ、遺伝子組み換えに頼らないので「安心・安全」も保証できるとしている。さらにタマにならない(丸くならない)レタスをつくれるので、ふつうのレタスは外側の葉や芯の部分など30~60%は廃棄されるが、栽培改良で廃棄部分は2~3%に抑えられコストパフォーマンスがよく、ゴミも減らせるという。

 ◇初期投資は5000万~7000万円、7年で回収
 「みらい」はこうした野菜の装置を5000万~7000万円で売り、培養液、LED照明、大気組成分の調整、空調などをプログラミングし、調整することも指導する。このため初期投資費用は6~7年で回収できるとしている。

 ◇野菜不毛地帯、砂漠国にも輸出
 今後は自ら製造・小売業に進出したり、小規模でも採算のとれる生産システムの開発、商店街の空き店舗の利用、店舗のインテリアに使うなどのビジネス展開も考えている。また、砂漠など野菜の作りにくい国や土地にシステムを売り込むこともできれば、農業ビジネスはこれまでとまったく違う展開になり得るだろうと考えている。現在は施設や水耕栽培のノウハウを教える農業コンテンツ産業、施設販売に特化しているが、近い将来には自分たちで野菜の製造・販売や、野菜不毛地帯へのシステム輸出、さらには家の中の花のように装飾用に野菜づくりをしてもらうビジネスも成り立つのではないかと夢みる。

 小学生時代から好きなことをコツコツと追い、大学、企業で研究を重ね、ついに事業化に成功した嶋村さんの「みらい」。こうした新しい内需産業の芽は今あちこちで芽生えているのだ。これからも、できるだけそれらを紹介していこう。[TSR情報12月3日号(同日発刊)]

 番組では、砂漠国への進出のための野菜工場コンテナが紹介されていた。そこには、各業種で開発されてきた世界でもトップクラスの単品(太陽光発電パネル、LED、水耕栽培システム、水溶液など)を持つ会社がプロジェクトを組みコンテナをつくり世界市場で勝負をしていくことに注目していた。

 単品での勝負だとコストの面などで苦戦を強いられているが、日本は「システム化」という面では昔より世界の中でも秀でた能力を持っている。そこを大いに活用する発想の転換が必要だとも強調されていた。

 確かに、良し悪しは別として、トヨタのかんばん方式、クロネコヤマトの宅配システム、コンビ二の管理システム、TUTAYAのレンタルシステム、電車の運行システムなどのきめ細やかさは見事だし、今、見直されている江戸時代のリサイクルシステムなどを考えると日本人の特性かなとも思う。

 1つの活路が見えたような気がした。

 

コメント (1)
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