かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

大垣市守屋多々志美術館/旧大垣貯蓄銀行ビル(岐阜県大垣市)

2014-01-13 | 西濃の近代建築

大垣城の東側、南北に走る美濃路(県道57号線)と東西に走る県道237号線の郭町交差点の北東角に真っ白に塗られた3階建のビルがあります。外観からは銀行のようなイメージを受けますが、元々は昭和初めに大垣貯蓄銀行の本店として建てられたものです。大垣貯蓄銀行→名鉄マルイ百貨店→大垣共立銀行と変遷し、現在は大垣市出身の日本画家、守屋多々志美術館として再生活用されています。

昭和に入り、建築デザインは極力装飾を排除したモダニズムへ向かいますが、この建物はまだ壁面や1階の柱などに様式建築の名残ともいえる幾何学模様の装飾をまとっています。近代建築ファンにとっては、だだの四角い箱(インターナショナル・スタイル)のトーフ建築ではあまりに見所が少なく面白みに欠けるので、ある意味戦前の近代建築の見どころを残してくれているおいしい作品なのが嬉しいところです。

設計は岐阜を代表する建築家河村鹿市で、彼の代表作である表現主義の傑作岐阜教育会館が取り壊されたため、県下でも現存する数少ない貴重な作品となってしまいました。この建物は岐阜教育会館に比べると見た目は地味ですが、様式とモダニズムのはざまを駆け抜けた表現主義の名手、河村鹿市の名人芸がいかんなく発揮された傑作です。


◆大垣市守屋多々志美術館(旧大垣貯蓄銀行ビル)/岐阜県大垣市郭町2-12
 竣工:昭和3年頃(1928)
 設計:河村鹿市
 施工:大林組
 構造:RC造3階建
 撮影:2013/11/23


■2階以上の壁面に全く開口部がないので、(後に改築か?)まさにコンクリートの箱のような外観ですが、壁面を立体的に仕上げて柱が並んだような効果を出し、随所にある簡略化された装飾がアクセントになっているので、細部を見る楽しみは残されています。









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