西尾建築散歩 その6~愛知県立西尾高等学校武道場/旧西尾中学校武道場
名鉄西尾線桜町前駅を下車、北西に住宅街を10分程歩くと愛知県立西尾高等学校があります。
前身は西尾町立西尾高等女学校(大正7年開校)で、大正15年に旧制西尾中学校として設立されました。
校舎は地元民の寄付でつくられ、設計は地元の大中肇と伝えられていますが、当時の校舎は建て替えられ現存していません。
唯一同時期の昭和4年に建てられた武道場が残っていて、窓などはサッシに改修されましたが、現在も当時のまま大切に使われています。
外壁は鉄筋コンクリート造、小屋組みは木造と鉄棒を組み合わせたクィーンポストトラスという、この時期の鉄筋コンクリート造建築によく見られた構造になっています。
建物は校舎の北東、東側のグランドに面した一番奥まった所にあり、わたしの訪問時もグランドでは野球の練習試合が行われていました。
グランド脇で武道場の写真を撮っていると、先生らしき人から「OBの方ですか?」と声をかけられ、近代建築撮影の趣旨を説明すると快く西高の名が入った特注の屋根瓦などの説明をしてくださいました。
先生の話からも唯一残る旧制中学からの古い武道場が、西尾高校のシンボルとして大切に使われている様子が伝わってきました。
歴史のある建物は人それぞれの思いがそこに寄り添っていて、またその建物に出会うことで新たな思いをそこからもらえる、そんな近代建築の良さを再認識した一日でした。
◆愛知県立西尾高等学校武道場(旧西尾中学校武道場)/愛知県西尾市奥新田2-2
竣工:昭和4年(1929)、昭和58年改修
設計:大中肇(伝承)
構造:RC造+木造平屋
撮影:2011/09/25
建物南側外観~屋根は本瓦葺の和風ながら外観はセセッション建築の影響を受けた洋風建築
建物北側外観
建物西側~右手に出入り口が設けられている
西側屋根の立派な鬼瓦には西高と學の文字が刻まれ
建築時の地元の人々の学校に対する思いが伝わります
軒瓦も西高の文字が入る特注品
南側屋根の鬼瓦