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路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

一宮市建設部維持課分室倉庫/旧伝染病隔離病棟(愛知県一宮市)

2013-03-29 | 尾張の近代建築

一宮駅から西へ1km、八幡5丁目交差点南側に東西に長い木造平屋建の古い建物があります。
資料によると、大正8年に伝染病隔離病棟として建てられた建物で、現在は一宮市建設部維持課が倉庫として使用しています。
建物は瓦葺寄棟、横板張りの木造平屋建で、玄関のある北側には出窓や大きなガラスの引き戸を設け、開口部を大きくとっているのが特徴です。
北側に大きなガラス窓や戸を設けるのは当時の病棟建築ではよく見られる形式で、日当たりのよい南側に病室、暗い北側の廊下に欄間付の大きなガラスの引き戸を設け、採光や風通しを配慮した設計になっています。

ところでなぜ敷地の中央あたりに1棟だけポツンと大正の建物が残っているのか、その理由をわたしなりに勝手に推理してみました。
敷地の広さから、竣工当初から病棟が1棟だけというのは考えにくく、現存する病棟の南北に複数の病棟が存在し、現存する1棟を残し他の病棟は取り壊されたと考えるのが最も妥当なのではないでしょうか。
玄関だけが増築したような外観で、大正期の病棟とアンバランスなのが気になっていましたが、病棟をつなぐ渡り廊下の部分を途中でちょん切って玄関に改築したとすればつじつまが合います。
一宮市の施設として再利用されなければ、おそらく取り壊されていたであろう大正時代の病院建築、これからも末永く現役で使われると良いですね。


■外観はまったく装飾がなく実用一点張りの質素な造り。
近代建築としての面白みはありませんが、県下でも数少ない戦前の病棟建築を伝える貴重な建物です。




◆一宮市建設部維持課分室倉庫/旧伝染病隔離病棟(愛知県一宮市神山3丁目7-2)
 竣工:大正11年(1922)
 構造:木造平屋建
 撮影:2013/03/03


■明治村に移築保存されている日本赤十字社中央病院病棟(明治23年築)
こちらも中庭を囲み南北に病棟を配置する分棟式で、北側の廊下は全面ガラス張になっています。
一宮市の隔離病棟とは対照的に、下見板張りにハーフティンバー風の装飾を施し明るい雰囲気を演出しています。


■明るいガラス張の廊下~右手は病室



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