先日書いた「自分のケツ」のおじさんは三週間ぶりに炊き出しに顔を見せてくれた。
やはりカレーの列の一番最後に彼は並んだ。
私が並んでいたおじさんたちに挨拶を終えると、彼はゆっくりと歩いて来た。
私の彼を迎えるために、手を振りながら、ゆっくりと彼の方に向かった。
相変わらず、彼は言った「いや、もう痩せちゃって」と。
「良く来てくれました。待っていましたよ。その後、体調はどうですか?」
「いや、何も変わらない、食べても戻すようになったよ」そう言って市販されている胃薬を見せてくれた。
「どこで寝ています?」
「どこでも寝るよ。ダンボールがあればさ」
彼は路上生活をしているのであるが、いつも綺麗に身支度をし、彼の無精髭など見たことがなかった。
「もう覚悟を決めているから、何にも怖くはないんだよ。ただ、どこで行こうか{死のうか}、それをを考えているよ」
「そうなの、怖くないんだ」
「うん、もう怖くない。早く地獄に行くよ」
「おじさんは地獄なんかに行かないよ。天国だよ」
「いや、さんざん若い時、悪いことをして来たから、地獄だよ」
「いやいや、天国ですよ」
そう言うと、また三週間前と同じように、私を見ずにカレーを配っている階段の上の方だけを見て、苦笑いをしているだろう、顔を見せず、右手だけを上げて返答し、カレーをもらいために、階段をゆっくりと上がって行った。
その彼の後ろ姿に向かって、神さま、どうか彼に心の平安をお与えくださいと祈った。