昨日のうちに予約を入れ、朝一番で近所のホームセンターのなかにあるトリミングの店にあんの爪切りに行った。
もうそこに通い始めてから何年になるだろうか、私があんの爪切りに失敗して以来、あんは私が爪を切ると逃げるようになってからだから、たぶん三年か、四年ぐらい前から通っている。
そこで働くトリマーさんのなかでとても素敵なトリマーさんがいる。
以前、激しく泣き叫ぶあんのことを「おしゃべりを良くしますね」と微笑みながら言ってくれたトリマーさんである。
そういう風に言うものであるか、と私はとても感心したことを忘れない。
そして、そのトリマーさんがあんの爪切りが一番上手く、あんもだんだんとそのトリマーさんが爪を切っている時はあまり吠えなくなった。
だから、私はいつもそのトリマーさんがあんの爪切りをしてくるのを期待するようになった。
私がインドに行く前も、インドから帰って来てからも、運良くそのトリマーさんがあんの爪切りをしてくれた。
今朝も運良くそのトリマーさんがあんの爪切りをしてくれた。
いつもとても優しく柔らかい態度であんを迎えてくれる、それが私は嬉しく、たぶん、あんも爪切りは嫌だが嬉しいと思っているかも知れない。
そして、今朝はなんとあんは一度も吠えず、爪切りを終えることが出来た。
「あん、えらいね~!爪切り、終った!」と言うと、あんはいつもしばらく尻尾を垂らしままなのであるが、すぐに尻尾をくるりとあげた。
「今日は一度も吠えなかったね、えらいね~!」とトリマーさんも言ってくれた。
そして、私があんの頭を撫でていると、トリマーさんは話し続けた。
「私的なことになるんですが・・・」
私はトリマーさんが何を言い始めるのかとハッとした。
「オダヨシヒロ、知っていますか?」
いきなり何だろうと瞬時には何も思いつかなかった。
「私、オダヨシヒロの娘なんです」
「えっ、そうの!」
と言った私の心には、オダにこんなに大きな子がいるのかと驚いたのは言うまでもない。
オダヨシヒロとは小学校、中学校の同級生でとても仲が良かった友達である。
トリマーさんは客の私のことを家で話し、黒柴あんのことと私が海外に行っていると言うことで、オダは私だと思ったらしく、娘のトリマーさんに話したと言う。
トリマーさんは現在同棲中でオダは心配して良くつまらないことをラインしてくるようである。
最近も娘の仕事場に飼っている犬とともに現れ、「送って行く」と言ったようである。
「父は心配なんですよ」と照れてニコッとして、トリマーさんは言っていた。
親との優しい関わりから伝わる愛を私は感じた。
オダの娘は良い娘さんだとしみじみと思い、私は何だかあたたかな思いに包まれた。
あんも笑顔だったような気がした。
あんは爪切りが嫌かも知れないけど、オダの娘さんだったら、また会いたいと思ってくれると、私はニコッとして願う。