雪月花 季節を感じて

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夏鮎

2006年06月30日 | うす匂い ‥水彩画
 
 雨とモーツァルトをききながら、ぼんやり窓の外をながめていましたら、いつのまにか一年の半分がすぎていました。この半年の間、わたしは何をしていたかしら。みなさまは、いかがですか。

 陰暦六月晦日は夏越の祓(なごしのはらえ)です。
 この日、京都では氷室の氷を象った三角形の「水無月」という外郎製のお菓子を食すそうですが、わが家は先日のおやつに「夏鮎」をいただきました。どらやきのようなうすい皮に求肥(ぎゅうひ)をはさんだ夏の和菓子です。お店によってすこしずつ意匠がちがうようですが、基本は上の絵のかたちで、中は餡でなくやはり求肥ですね。頭から食べるのはちょっとかわいそう。でも、淡い甘みと求肥のもちもち感がたまりません ^^


 ふるさとの川に鮎が遡上します。「清流の貴婦人」の異名をもつ鮎。50~70cmのジャンプ力でちいさな堰を飛び越えて、秒速1~1.5メートルの速さで川上をめざします。産卵の時期を迎えて落ち鮎、錆鮎(さびあゆ)となるまで、天敵(わたしたち人間?)に捕えられてしまう危険をいくどもすりぬけながら‥

 松浦川(まつらがわ)川の瀬早み くれなゐの裳の裾濡れて鮎か釣るらむ
 (『万葉集』 作者不詳)
 松浦川の流れは早くて、娘たちは紅の裾を濡らしながら鮎を釣っているだろうか

 紅の裾が濡れることもかまわず釣りをする娘たちの健康な笑顔と姿が、銀色に光る背を見せて早瀬を遡上してゆく香魚の勢いのよさと重なります。水面をわたる風が涼しそう。夏越の禊(なごしのみそぎ)にふさわしい季節の歌でしょうか。


 鮎は、夏の膳の楽しみのひとつでもあります。京都の料理屋さんで、天然の鮎の、カリッと焼き上がった塩焼きを頭からそのままいただいたことがありますが、ほんとうにおいしかった。忘れられない夏の味です。

 鮎季(あゆどき)の山の重なる京都かな (長谷川 櫂)

 まもなく本格的な夏を迎えます。鮎もよいけれど、鱧(はも)も食べたい‥
 
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