染織家の中野みどり先生による「紬塾'10」を修了しました。
きものに日々触れるうち、きものについての一般的な諸説に疑問を感じはじめたころ、中野先生の紬塾に出合いました。きものとは何か。あらゆる先入観を捨てて学びなおすために参加しました。
聴講、染織の実習、着付けのおさらい等をさせていただきながら、お蚕さんからぬくもりのある糸を、草木から美しい色をいただき、風合のよい堅牢な紬を織るため、先生が尽力したいせつにされていることを、この目でひとつひとつ確かめることができたことが何よりの宝ものです。工房を兼ねたお住まいで、お仕事と日々のくらしが一体となった中から生まれる先生の紬に、やすらぎを覚えます。
見て、触れて、身につけて、お手入れをしながら、きものと向き合い、語り合う。そうしてはじめて、きものとは何かを語れるということ。そして、きものを知ればくらしが変わることを教えていただきました。先生の貴重な教えと、ともに楽しく深く学んだみなさんに感謝のきもちでいっぱいです。
最終回のサロンでは、工芸評論家で「かたち21」代表の笹山央さんからも貴重なお言葉をいただきました。それは「環境にきものを合わせるか。それともきものから環境を考えるか」。
きもので東京の街を歩くとき、その街並みに合わせたきものを選んでいました。紺絣やざっくりとした紬などのきものでは落ち着かないきもちがしていたからです。
ところが、笹山さんのお話をうかがい「周囲の環境にきものを合わせる」ことばかり考えていたことが恥ずかしくなりました。「きものから環境を考える」というたいせつな視点が抜け落ちていたからです。中野先生と笹山さんのお仕事とくらしは、その視点から成っているのです。
次回の「紬塾'11」の募集要項は二月に発表され、三月より募集が始まります。紬塾の詳細は中野みどり先生のホームページにあります。美しいものを紡ぎ出す先生のお仕事をぜひご覧くださいね。
![]() | 染織の実習で織りました布です。経糸と緯糸が絡み合い面になる、とおもっていたのですが、現れたのはまるみのある微妙な立体でした。緯糸を入れて打ちこむたび、緯糸は“並んでゆく”のではなく“積み重なって”、立ち上がってくるのです。杼を投げて「カラ」、緯糸を打ちこんで「トントン」‥ここちよい音です。お蚕さま、草木、機の神さま、中野先生へ、深謝です。 |